葺き替え
葺き替え
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/19 02:42 UTC 版)
場所や使用状態にもよるがススキの茅葺の場合15-20年程度で屋根全体を葺き替えることが多いようである。ただし棟付近は傷みが激しいので定期的な補修が必要である。ススキの茅葺であっても棟にだけは耐久性の向上を目的としてヨシを用いることも多い。全てヨシ吹きの場合40年以上の耐久性があり、「刺し茅」という技法で補修するため屋根全体の葺き替えは殆ど行わない。ただし、ヨシはススキに比べて、材料も高く屋根を葺く技術も高いものが要求される。 材料の確保については、元来は村落周辺に茅場と呼ばれるススキ草原があった。これは、家畜の飼料などとして定期的に刈り入れを行い、あるいは春先に野焼きすることで遷移の進行を止めてススキ草原を維持していたものである。しかし、第二次世界大戦以降の生活の変化によって利用されなくなり、ほとんどが失われた。しかし、その後の減反や離農によりかつての耕作地が自然にススキ原と化している場所も増えていることから、茅集めは以前よりは苦労しなくなっているという。 2019年時点、日本で茅葺を請け負える職人は200人未満であるが、若手を育成している建築会社が出現するなど、減少に歯止めが掛かろうとしている。伊勢神宮では古来、神路山など宮域周辺の各所で茅を集めていたが、大正時代に茅を育成するための用地(神宮萱場)を同じ三重県内の度会郡度会町に確保した。この萱場では地元住民の奉仕により晩秋にススキが集められる。 茅の屋根の縁は見た目を美しくするため切り揃える場合が多いが、切り揃えないほうが水はけはいい、とも言われている。また水切り性を高めるためや、縁の直線を美しく切り揃えるために、縁の部分にのみ細く硬い麻幹(麻の茎)、苧殻(カラムシの茎)を用いる事もある。ちなみに古代中国の聖王・尭が質素な生活をしていたという逸話のひとつとして、宮殿の茅葺き屋根の端を切り揃えなかった事が、『十八史略』に記述されている。 住人が自ら葺く場合は穂の部分を下にした逆葺きが行われる事が多く、業者に頼んだ場合は穂を上に向けた本葺きが行われる事が多い。前者は後者に比べ茅の使用量を2〜3分の1に抑える事が出来、茅が滑り落ちない為に施工が簡単なものの、油分を含まない穂先が雨に曝される為、耐久性に劣る。 茅葺き屋根で用いる茅の大きさの単位は一様でない。伊勢神宮では荒茅一束(直径約41cm)を一単位としており、式年遷宮で使用される茅は約23,500束である。埼玉県立歴史と民俗の博物館が復元した弥生時代の住居の場合、屋根の厚さ40cmで屋根材として葺くために使用した茅の量は尺締めの単位(直径約30cm)で約750束だった。 費用は地域差もあるが、おおむね1坪あたり12万円前後(屋根全体で500万円程度)掛かるのが相場という。
※この「葺き替え」の解説は、「茅葺」の解説の一部です。
「葺き替え」を含む「茅葺」の記事については、「茅葺」の概要を参照ください。
「葺き替え」の例文・使い方・用例・文例
- 葺き替えのページへのリンク