職業後見人
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/12 02:18 UTC 版)
専門職従事者(いわゆる士業)による第三者後見人を、とくに「職業後見人」と呼ぶことがある。 団体として後見人活動に取り組んでいる例としては公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート(司法書士)、公益社団法人日本社会福祉士会の権利擁護センター・ぱあとなあ等が著名である。 公益社団法人成年後見センター・リーガルサポートは本制度発足前より、後見制度の先進国であるドイツ、英国等を視察し2000年4月の本制度発足以降も積極的に提言をしてきたという実績がある。また同団体の活躍もあり司法書士職能は職業後見人選任件数では職業後見人の中では一番多い。 弁護士は弁護士会や日弁連としての統一的・実務的な取り組みはなく、日弁連として提言をまとめる等の活動が行われるにとどまっている。なお個人的に積極的に成年後見分野で活動する弁護士も存在し、当分野で著名な中山二基子弁護士を中心とした有限責任中間法人が2005年に発足している。 司法書士は前述の通り団体としての活動も資格業の中では一番積極的と言える。社会福祉士は、福祉を通じて被後見人に身近な存在であるという実績がある。これらの3士業は後見人に関連する業務を行ってきた実績や能力、その取り組みが評価されているため第三者後見人・職業後見人の就任数も多くそのほとんどを占めている。 後見人の就任は各団体において研修等を修了し候補者として推薦された者がその団体の名簿に登載され、その名簿が家庭裁判所に提出され家庭裁判所が受領した名簿の中の候補者に対し、後見人就任の打診をするという流れとなっている。しかし、こうした職業後見人およびその候補者の数は現在ではまだ必要とされる数に比して少ないといわれている。成年後見分野に積極的に取り組んでいる弁護士の数は弁護士総数からみれば決して多くなく、制度発足時よりこの制度の推進に大きな役割を果たしてきた司法書士の数や社会福祉士の数を合わせても数が足りないという現状がある。 そこで、他の職能団体も積極的に後見業務に参画し始め、平成22年8月に日本行政書士会連合会は一般社団法人コスモス成年後見サポートセンターを設立し、成年後見業務に参画しているほか税理士も全国女性税理士連盟等によって成年後見活動に参画している例があり、また、埼玉県では社会保険労務士会の中で成年後見活動を行い、研修会も行なっているが、社会保険労務士業界全体として、制度に関心がある者が少なく、税理士、社労士はともに実績は乏しい。なお、専門職のなかで法律上後見業務を行える規定を明文で有するのは弁護士および司法書士のみであり、社会福祉士は社会福祉士及び介護福祉士法第2条の規定により主に身上監護の面から業務を行える根拠を有し、裁判所もそのように運用している。しかしながら行政書士・税理士・社労士等はこれらの業法ではその専門職として後見業務を行うことは法律上定めておらず、これら専門職の「業」として行えるわけではない。それぞれの専門職としての経験を生かしつつ一個人として行っているにすぎず、専門職能の「職業」後見人ではない。なお、日本行政書士会連合会は他士業とは異なり、高齢社会における成年後見業務を「業」と考えることはせずに、高齢者・障がい者支援、社会貢献活動の一環と位置づけて活動を進めている。 また、職業後見人不足解消の一案として平成24年2月より最高裁判所家庭局の主導の下、後見制度支援信託制度が開始された。これはある一定の財産を信託契約することで親族後見人の不正を防ぐことで成年被後見人等の財産を守り、比較的大きな財産がある場合でも親族後見人の就任を可能にすることで後見人候補者の潜在的数を増やす目的があった。同制度導入の際には日弁連、日本司法書士会連合会、公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート、社団法人日本社会福祉士会の職業後見人関連4団体と最高裁判所家庭局の間で事前協議が数回なされた。このことは職業後見人として司法書士・弁護士・社会福祉士(選任数順)の存在が大きいことを示すことになった。 このように、後見制度支援信託制度の導入、弁護士・司法書士・社会福祉士以外の士業や団体等も後見人養成を行っており、今後増加する後見人の受け皿を増加させる動きが増えている。
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