翻訳物
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/06/21 04:35 UTC 版)
モンゴル語のケサルの文書をロシア語に翻訳したものが存在する。それは、1716年以降に北京で印刷されたものを翻訳し、モラヴィア兄弟団の宣教師イザーク・ヤーコプ・シュミット(英語版)が1836年に発表したものである。これに続く形で1839年にはドイツ語にも翻訳された。20世紀に入ると、この他のモンゴル語によるケサルの文書もニコラス・ポッペやヴァルター・ハイシヒのような学者たちによって編纂された。 19世紀末から20世紀初めにかけてまとめられ『リンツァン・徳格木版』として知られている版のうち最初の3巻までが、1956年にロルフ・スタイン(英語版)教授により非常に忠実ながら不完全な訳でフランス語に翻訳された。続いてスタインは、『Recherches sur l'Epopee et le Barde au Tibet』 (チベットの叙事詩及び詩人についての研究)と題する600ページにのぼる大著を発表した。これは今日でもなおチベットのケサルの伝承に関する最も詳細な研究書である。 P.マティアス・ヘルマンス博士 (Prof. Dr. P. Matthias Hermanns)は別の版を1965年にドイツ語に翻訳している。この翻訳は彼自身がアムドで収集した文書を基としている。この本には彼の広範囲に渡る研究成果が詰まっており、この叙事詩は、北東部チベットの遊牧民たちの英雄時代の成果であり、アジア内陸部の草原地帯の他の多くの民族との交流の産物であると説明している。また、叙事詩の成立はチベットへの仏教伝播以前にさかのぼると考えており、この叙事詩の中に、古代チベットの「天から遣わされた王」原型に関する表現を見てとっている。この表現は7世紀から9世紀まで存続したヤルルン王朝(ヤールン王朝、吐蕃)の開祖らに関する神話にも見られるものである。 A.H.フランケ (A.H. Francke)は1905年から1909年にかけて下ラダック地域で、同地域のバージョンの収集と翻訳の活動を行った。 英語で最も入手しやすい翻訳は、アレクサンドラ・ダヴィッド-ネール(英語版)による『Superhuman Life of Gesar of Ling』 (リンのケサルの超人的な生涯)で、1930年代にフランス語、ついで英語で出版された。
※この「翻訳物」の解説は、「ケサル王伝」の解説の一部です。
「翻訳物」を含む「ケサル王伝」の記事については、「ケサル王伝」の概要を参照ください。
- 翻訳物のページへのリンク