紙発明以前
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/06 01:03 UTC 版)
紙が発明され普及する前から、人間は世界各地でさまざまなものを文字などを筆記する媒体として利用してきた。例えば、次のものが知られている。 筆記媒体地域説明石 世界各地 人類は伝えたい内容や切なる祈りを絵や文字として、石に刻んだ。自然の洞窟や断崖の壁面、人工的に切り出した石塊、または持ち運びできる小さな石など。万人が閲覧できる状態であったであろうものから、自分のために書かれたであろうものまで、その用途は様々である。摩耗・風化などはあるが石は保存耐性が高いため、数百もしくは数千年を経てなお今日でも読むことができるものが世界各地に存在する。これとは別に、当時の金属製品や土器に刻まれた文字もある。 粘土板 古代メソポタミア 泥を、板の形にして干したもの パピルス 古代エジプトのち西アジア・ヨーロッパ パピルス(植物)の幹を薄く削ぎ、直角に交叉させ、おし叩いて接着したもの。なお、「papyrus」は英語で紙を意味する「paper」の語源となっている。誤解されがちだが、古代エジプトはパピルスだけを使用していたのではなく、樹皮・粘土・木材・金属・陶器など、滑らかな表面を持つものは全て、文字を記すために使われた。 オストラコン 古代ギリシャ、古代エジプト 主に陶器の破片を利用したもの。少ない文言のメモから、長文のものまで存在した。エジプトでは「シヌヘの物語」や「夢のオストラカ」が書かれた長文も出土する。ギリシャでは政治家の信任投票に使われたことで著名であり、陶片ではなく投票記入専用のオストラコンが製造された。その投票「陶片追放」(オストラキスモス)の語源でもある。 羊皮紙 西アジア・ヨーロッパ 動物の皮を筆記用に加工したもの。羊・仔牛・山羊・鹿・豚の皮革を原材料にしたもの。 貝多羅葉(貝葉) インド、東南アジア 主に椰子の葉を筆記用に加工したもの。写経などに使われた。かさばるため、大量の筆記には不向き。 アマテ 中南米(アステカ・マヤ・オルメカ文明など) Ficus insipidaなどのクワ科やイチジク属の木の樹皮を煮て石で叩き伸ばし、のち整形したもの。 その他樹皮 各地 東南アジアでは桑の樹皮が写経などに使われた。欧州北部ではシラカバの樹皮が用いられた。 木簡・竹簡・経木 中国・朝鮮・日本 木や竹を、墨で筆記できるように細長い板にしたもの。風雨や衝撃に対して紙より丈夫であり、また削って再利用できる利点があることから、紙が普及してからも荷札などで便利に使われた。 帛書 中国・朝鮮・日本 絹の布。高価なため希少であり、のちには高級な書や工芸品に使用された。格下の用途としては木綿布や麻布も使用された。
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