第二段階: 砦下の通過
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/17 07:47 UTC 版)
「ジャクソン砦・セントフィリップ砦の戦い」の記事における「第二段階: 砦下の通過」の解説
ファラガットは砦下を通り過ぎるという決断をし、ベイリー大佐の第1砲艦部隊に2隻の艦船を加え、それによって自身の部隊のシップを無くすという修正を加えた。この変更後、艦隊の配置は次のようになった。 第1部隊、セオドラス・ベイリー大佐: USSカユガ、USSペンサコーラ、USSミシシッピ、USSオネイダ、USSバルナ、USSカターディン、USSキネオ、USSウィサヒッコン 第2部隊、艦隊司令デヴィッド・ファラガット: USSハートフォード、USSブルックリン、USSリッチモンド 第3部隊、ヘンリー・H・ベル大佐: USSサイオタ、USSイロコイ、USSケネベック、USSピノラ、USSイタスカ、USSウィノナ シップのUSSポーツマスは臼砲スクーナー隊を守るために残された。 砦下を過ぎるとき、艦隊は2列になった。右列はセントフィリップ砦に向かって砲撃し、左列はジャクソン砦に砲撃することにした。砦に対して止まったりノロノロ行ったりすることは無く、できる限り速く通り過ぎることとした。ファラガットは、暗闇と煙の組み合わせで砦の砲手の照準を狂わせることを期待した。各艦船は比較的無傷で通り過ぎられるはずだった。 4月24日午前3時頃、艦隊は前進を開始し、水路を遮っていた鎖の隙間に向かった。この障害物を過ぎると間もなく、砦の哨兵が艦隊を視認し、即座に使える限りの火力を使って砲撃を開始した。ファラガットが期待していたように、その狙いが定まらず、艦隊にはほとんど損傷が与えられなかった。もちろんファラガットの方の砲手も狙いが悪く、砦の方にも損傷はほとんど無かった。隊列の後方にいた砲艦3隻が引き返した。イタスカはボイラーに砲弾を受けて航行不能となり、漂流して戦場から抜けた。他にピノラとウィノナは、夜明けになったために引き返したが、砦の大砲が効果を表したからではなかった。 南軍の艦隊は戦闘のこの段階でほとんど関われなかった。CSSルイジアナはその大砲を使うことが出来たが、ほとんど効果は無かった。装甲衝角艦CSSマナサスは直ぐに駆けつけて敵と渡り合ったが、砦の砲手はマナサスと北軍艦隊の区別がつかず、友艦に向かっても敵艦に向かっても見境無く砲撃した。その艦長であるアレクサンダー・F・ウォーリー中佐は、北軍艦隊に砲撃されたときのみ攻撃できるよう川の上流に後退させた。 砦下を過ぎると、北軍隊列の先頭は南軍艦船数隻による攻撃を受けるようになり、隊列の後方ではまだ砦からの砲撃を潜ってきている状態になった。南軍の艦船は指揮系統が乱れていたためにその動きに協調性がなく、戦闘は艦船同士1対1の争いに変わっていった。 CSSマナサスは、USSミシシッピとUSSブルックリンに衝角攻撃を行ったが、どちらも航行不能までにはならなかった。夜が明けると自艦が北軍艦船の間に入ってしまい、どちらにも攻撃できないことが分かったのでウォーリー艦長は座礁させることを命じた。乗組員は艦を放棄し、火を点けた。後にマナサスは火が付いたままバンクを離れて漂い出し、最後はポーターの臼砲スクーナーの見ている前で沈んだ。 タグボートのモシャーが火のついた筏を北軍旗艦USSハートフォードの方に押して行ったが、ハートフォードの舷側砲によって沈められた。ハートフォードは火のついた筏を避けようとしていてセントフィリップ砦から上流のそれ程遠くない位置で座礁した。砦の大砲から射程距離内にあったが、砦からは撃ってこなかったので、先ず炎を消し、ほとんど損傷が無いままでバンクから離脱できた。 CSSガバナームーアは戦闘に入りながら混乱し、南軍のタグボートベルアルジェリンに突っ込んで沈めてしまった。北軍艦隊の攻撃に向かうと、USSバルナが1隻はぐれているのを見つけた。それから長い追跡が始まり、両艦は帆走を続けながら砲撃戦を行った。この追跡の間に乗組員の多くを失ったにも拘わらず、最後はバルナに衝角攻撃を行うことができた。河川防衛艦隊のコットンクラッド衝角艦CSSストーンウォールジャクソンも衝角攻撃を行った。バルナは沈む前にバンクに近い浅い水域に辿り着いた。この戦闘中に北軍が唯一失った艦船となった。ガバナームーアのビバリー・ケノン艦長は戦闘を続けたが、その操舵手は十分戦ったと考え、艦を座礁させた。ケノンはその操舵手の方が正しいと認識し、それ以上は何もできないと考えたので、艦の放棄と放火を命じた。 CSSマクレイは北軍艦隊の数隻と交戦したが、太刀打ちできないまま艦長のトマス・B・フーガー中佐も致命傷を負った。マクレイ自艦にも大きな穴が開き、戦闘では生き残ったが、後にニューオーリンズの係留地で沈んだ。 南軍艦隊の他の艦は北軍艦隊に危害を与えられないまま、その多くは敵の攻撃か、自身の手によって沈んだ。マクレイ以外に残ったのはCSSジャクソン、衝角艦CSSディファイアンス、輸送船CSSダイアナだった。非武装の補給船2隻は砦近くにいた臼砲戦隊に降伏した。ルイジアナも生き残ったが、降伏よりも自沈を選んだ。 北軍海軍はこの砦下通過で1隻を失ったが、南軍は12隻を失っていた。
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