自沈とは? わかりやすく解説

じ‐ちん【自沈】

読み方:じちん

[名](スル)自分乗り組んでいる艦船を自らの手沈めること。


自沈

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/12/16 04:02 UTC 版)

スカパ・フローで自沈した巡洋戦艦ヒンデンブルク(1919年)

自沈(じちん)は、船舶もしくは艦艇の乗組員が、自船(艦)を自らの手で沈没させること。乗組員以外によるものは、友軍の手によるものでも自沈とは呼ばない。未成、あるいはすでに除籍されているなど乗組員がいない船(艦)の場合も同様。

商船においても敵性国による捕獲の危険が迫った場合には本国政府から自沈指示が出され、自沈が実行されたことがある[1]

概要

主に作戦行動の継続が困難になった軍艦が機密保持、捕獲防止のために行うケースが多い。

また、港湾等防衛戦の折、敵艦船・揚陸艇などの湾内侵入・上陸を防ぐため、湾口等に予め味方艦艇を多数自沈させ、水面下にバリケードを作る目的で行われることがある。この場合、輸送船や旧式軍艦を自沈させる場合が多い。なおこれを攻勢作戦(敵の軍港の能力を奪いに行く)として用いた例に、日露戦争での旅順港閉塞作戦第一次世界大戦でのゼーブルッヘ閉塞作戦第二次世界大戦サン・ナゼール強襲などがある。少し変わった例としては中東戦争でエジプトがスエズ運河を通行不能にするために商船を沈めたケースや、日中戦争で中華民国が日本軍の揚子江遡航を阻止するため当時保有する大型艦ほぼ全てを自沈させたケースなどもある。

民間の船舶の場合、かつては火災等により大きく損傷した船舶を曳行、修理する費用が割に合わないとして、事故地点が外洋の場合は自沈させる例があった。これらは保険の適用審査が厳格になるに従って行われなくなっていった。外洋の航路上で航行不能になった船舶を、漂流による二次災害(他の船舶への衝突事故や、漂流した後の座礁)を防ぐために自沈させた、という事例も存在する。

犯罪組織もしくは密航組織がそれらの目的にもちいた船舶を証拠隠滅のために自沈させる例は多く、カリブ海沿岸では麻薬戦争に関連して、洋上からの麻薬密輸に用いられた船艇が自沈させられた後に発見される事件が多数発生している。中には、麻薬組織が自作した潜水艇が自沈後に発見された例もあった。

軍事における自沈の例

集団自沈

軍港に追い詰められた艦隊が進退窮まって集団自沈した事例としては、米西戦争時のサンチャゴ・デ・クーバのスペイン艦隊や日露戦争時の旅順のロシア艦隊が挙げられる。

艦隊規模の自沈として史上最大級なのが第一次世界大戦後の1919年6月21日に発生したドイツ艦隊によるものである。イギリスのスカパ・フローに抑留されていたドイツ艦隊が、イギリスによる接収と戦勝各国への賠償としての分配を避けるために、一斉に自沈した。接収を避けるための類似例として第二次世界大戦中の1942年11月27日にフランス艦隊トゥーロンで、1943年8月29日にデンマーク艦隊コペンハーゲンで、それぞれドイツ軍による接収を避けるために自沈したことがある。なおドイツ海軍も1945年4月~5月の終末期に残存艦の多くが自沈した。

1944年6月6日のノルマンディー上陸作戦では、港の無い海岸地帯に迅速に補給体制を確立するため旧式艦船を自沈させて即席の防波堤にした。これによって守られた水域は「グースベリー」と呼ばれた。なお自沈ではないが、現役を退いた艦船を沈めて防波堤にする事例は多数ある。

1940年4月のナルヴィク海戦では、ドイツ海軍の駆逐艦が燃料と弾薬の欠乏に直面する最中に英艦隊に殴り込まれ、フィヨルドの中で集団自沈した。ドイツ海軍は二次にわたるこの戦いで当時保有する駆逐艦の半数近くを失った。

単艦の自沈

脚注

  1. ^ 新谷 哲之介「<研究ノート>海上保険における戦争危険の実際」『損害保険研究』第74巻第3号、公益財団法人 損害保険事業総合研究所、2012年、99-152頁。 
  2. ^ https://iz.ru/1300364/2022-03-04/na-ukraine-podtopili-flagmanskii-korabl-getman-sagaidachnyi

関連項目


自沈

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/08/30 00:13 UTC 版)

バージニア2 (装甲艦)」の記事における「自沈」の解説

北軍進撃は急であり、南軍リッチモンド放棄した4月3日、ラファエル・セメス提督Raphael Semmes)によりジェームズ川艦隊艦艇に対して鹵獲避けるための自沈が命令されたが、これはバージニア2の修理完了した直後のことであった戦争終了後着底していたバージニア2は引き揚げられた。

※この「自沈」の解説は、「バージニア2 (装甲艦)」の解説の一部です。
「自沈」を含む「バージニア2 (装甲艦)」の記事については、「バージニア2 (装甲艦)」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「自沈」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ

「自沈」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。



品詞の分類


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「自沈」の関連用語

1
自沈し 活用形辞書
100% |||||

2
自沈しろ 活用形辞書
100% |||||

3
自沈せよ 活用形辞書
100% |||||

4
自沈できる 活用形辞書
100% |||||

5
自沈さす 活用形辞書
100% |||||

6
自沈させる 活用形辞書
100% |||||

7
自沈され 活用形辞書
100% |||||

8
自沈される 活用形辞書
100% |||||

9
自沈しうる 活用形辞書
100% |||||

10
自沈しそう 活用形辞書
100% |||||

自沈のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



自沈のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
デジタル大辞泉デジタル大辞泉
(C)Shogakukan Inc.
株式会社 小学館
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの自沈 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaのバージニア2 (装甲艦) (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2025 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2025 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2025 GRAS Group, Inc.RSS