神智学/オカルトへの傾倒~「ターシャム・オルガヌム」~インド旅行(1905年~1915年)
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「ピョートル・ウスペンスキー」の記事における「神智学/オカルトへの傾倒~「ターシャム・オルガヌム」~インド旅行(1905年~1915年)」の解説
一九〇七年、P・D・ウスペンスキーは神智学運動を知り、ヘレナ・ブラヴァツキー、ルドルフ・シュタイナー、エリファス・レヴィなどによる書物を読みふけるようになった。P・D・ウスペンスキーは新聞社で働きだすが、デスクの引き出しには、たとえば次のような題名の本が入っていた。『オカルトの世界』、『死後の生』、『アトランチスとレムリア』、『高等魔術の教義と儀式』、『サタンの寺院』、『ある巡礼者の真実の告白』。 一九〇八年に神智学協会の活動がロシア国内で認められると、ロシアのインテリゲンチャの間でのオカルト熱はいっそう高まった。ちなみにグルジエフはというと、神智学運動、それから派生したシュタイナーの人智学運動、および当時流行した類似の運動に対する意見は一貫して否定的なものであった。 オカルトと神秘思想に加え、イマヌエル・カントの観念論、フリードリヒ・ニーチェの思想、それに「第四次元」に関するチャールズ・ヒントンの本から仕入れた大量の知識を利用して、一九一一年、P・D・ウスペンスキーは、大作『ターシャム・オルガヌム』を書き上げた。 『ターシャム・オルガヌム』は、P・D・ウスペンスキーの主著であり、彼の名を一躍有名にしたが、これを傑作と見なすかどうかは、かなり読者しだいである。この本のヒットは、「第四次元」という考えのその時代における流行に依存していた。また、『イワン・オソキン』では、確実にウスペンスキー自身というものがあったのに対し、『ターシャム』での議論は、イマヌエル・カント、チャールズ・ヒントンの受け売りが多く、論述もたいへんな熱を帯亭はいるが、つじつまがあわないところも多い。グルジエフやウスペンスキーを8年にわたって研究して『調和した環』を著した歴史家のジェイムス・ウエブは、次のように評している。 『ターシャム・オルガヌム』は啓示の書である。一九一一年、意識を変化させる実験への熱中を背景にウスペンスキーによって書かれた。[……] 『ターシャム・オルガヌム』は尋常ならざる本で、高い熱に浮かされて書かれたものという印象を受ける。ウスペンスキーの信奉者の多くは、これが彼の最高傑作だと今も思っている。そしてたしかに、彼を有名にしたのは、なんといってもこの本だった。はっきりと書かれた本で、最高の意味における「解放感」をもたらす。人があたりまえだと思って受け入れている作為的な枠組みによって人の意識は制限を受けているという主題をめぐるウスペンスキーの主張は重要な点を突いていて、説得力がある。 高次元の空間認識ということに話を結び付けているのは、たんなるアナロジーとして話を結び付けているだけかもしれないが、そんなことはどうでもよい。少なくとも二つの点で、彼の言っていることは、まったくもって根拠に乏しいが、それもどうでもよいだろう。無限の度数とかいうことに捧げられた章の内容は、考えてみると、なんのことかわからない。人間の意識と動物の意識の違いに関する論述も、まるごとでたらめと言えるかも知れない。ウスペンスキーが書くことを聖句みたいに受け取る人が、そうしたことを問題にするのだ。[……] そうした観念[第四次元]のピョートル・ウスペンスキーによる利用法は、学問としての数学をほとんど無視したものである。ところが、彼の最初の英語の本[『ターシャム・オルガヌム』]が出版されたとき、[出版社の主張によれば]訳者の犯した間違いのせいで、厳格な学問の道を歩いてきたが、わけあって独自の学派を形成するに至った人物であると紹介され、いまでもそれが信じられている。 さらにウスペンスキーは、麻薬を使った「実験的神秘主義」を追求し、のちにその結果を『宇宙の新しいヴィジョン』に収めている。また、インドとヨガに関心を抱く。1914年、複数の新聞社から資金面での助けを得て、P・D・ウスペンスキーはインドに旅立つ。ボンベイから入って、アグラで満月の夜にタージ・マハールを訪れた後、デリーへと向かったのが雨季の始まりだったというから、たぶん七月ごろのことだろう。その後、ヴァラナシを経て、南インドとセイロンに向かっている。ロシアに帰ってきたのは同年の11月で、すでに第一次世界大戦が始まっていた。
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