直流化工事
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/03 01:54 UTC 版)
「北陸本線#一部区間の直流化」、「近江塩津駅#直流化工事による輸送改善」、および「敦賀駅#北陸本線 - 湖西線の直流化」も参照 湖西線建設当時、山科駅は直流で、近江塩津駅は交流で、それぞれ電化されていたため、近江塩津駅手前の永原駅との間に交直セクションが設けられた。これにより、大阪・京都方面から湖西線を通して北陸方面に直通できる車両は、気動車やディーゼル機関車などの内燃動車や動力を持たない客車・貨車を除けば車上で交流と直流の切り替えができる485系などの交直流電車と交直流両用のEF81形電気機関車に限られた。山科駅 - 永原駅間は直流電化で建設されたため同区間の普通列車は直流電車で運転されていたが、需要が多く見込めない湖西線と北陸本線との直通列車には特急列車を除いて高価な交直流電車は投入されず、近江今津駅 - 近江塩津駅 - 敦賀駅間の普通列車は電化区間でありながら1991年9月13日まで気動車で運転されていた。 一方、北陸本線も交流電化のためローカル列車の本数も少なく、湖北地区と大津や京阪神間の移動には米原駅での乗り換えが必要であった。滋賀県や地元自治体は国鉄時代の1986年に沿線市町・商工会で「北陸本線直流化促進期成同盟会」を設立し、北陸線の利便性向上には電化方式の変更が必要と国鉄・JRへの要望活動を進め、さらに1990年5月には、湖西の市町も加わり「琵琶湖環状線促進期成同盟会」を新たに発足させ、JRへの働きかけを進めた。その結果、翌年北陸線米原駅 - 長浜駅間の直流化工事が行われた。もともと実際の交直セクションは同線の坂田駅 - 田村駅間であったので、これを長浜駅 - 虎姫駅間に移設したものである。工事費約7億円は県や長浜市など地元自治体の負担でまかなった。工事完成による1991年9月14日のダイヤ改正以降、京阪神からの新快速が長浜駅まで直通したことで、長浜市では観光客の増加と人口増加という経済効果をもたらした。新快速の乗り入れで長浜市が京阪神の通勤圏となった一方、黒壁スクエアなど地元の観光資源活性化などが反響を呼んだ結果多くの観光客が長浜市へと足を運ぶようになり、街づくりの起爆剤としての直流化工事は注目を浴びた。 その成功を見て、同様に交流電化で列車本数が少なく米原駅以西への直通がなかった湖北地区でも「新快速の直通を」という機運が高まり、湖北地区の各自治体も動き出した。湖西と湖北地区の相互交流もこの交直セクションが障害となり直通列車が少なく不便であったため、これらを解消するためにも直流化工事は地元の重要課題であった。1995年からは基金として毎年工事費用を各自治体が積み立てることを始め、「琵琶湖環状線構想」を前進するよう駅周辺整備や観光施設の案内整備に努めた。一方、長浜市の成功事例を参考に、敦賀市も新快速の直通による観光客の増加を目論見、福井県とともに京阪神からの直通列車を増発するためには直流化が必要、と働きかけるようになった。 そこで鉄道整備の一環として、 新快速を湖北に直通させる 湖西湖北の列車利用による移動をより便利にする 敦賀へ京阪神から直通の新快速を走らせる という狙いで、湖西線と北陸線の直流化工事が行われた。工事は地元の請願という形で、滋賀県側(県と地元自治体)と福井県側(県と敦賀市)がほぼ折半の形で工事費を負担した(工事費は161億円で、うち滋賀県側が75億円・福井県側が68億円の設備費用分を負担し、JR西日本が車両新製費として18億円を負担している)。 直流化工事は、長浜駅 - 虎姫駅間と永原駅 - 近江塩津駅間にあったデッドセクションを敦賀駅 - 南今庄駅間(厳密には敦賀駅 - 北陸トンネル敦賀口間)に移設し、北陸線長浜駅 - 敦賀駅間、湖西線永原駅 - 近江塩津駅間を直流き電とするもので、2006年9月24日に完成した。 これにより、同年10月21日にダイヤ改正が行われ、日中を中心に1日25本(湖西線経由17本、琵琶湖線・北陸本線経由8本)が近江今津駅・長浜駅から延長される形で敦賀駅まで、1日18本が近江塩津駅(琵琶湖線・北陸本線経由)まで乗り入れるようになった。近江塩津駅では、日中に湖西線方面からの下り敦賀行きから当駅始発の上り米原方面行きに、また米原方面からの当駅止まりから湖西線上り列車に同一ホームで乗り換えができるようになり、湖西線と北陸本線の接続が改善された。但し、元からホーム長の長い敦賀駅を除いて近江塩津駅など直流化された駅ではホーム延伸や4両を超える長さでの嵩上げ工事は行われなかったため、6両や8両などの普通列車は現在でも永原駅止まりで運転されている。 なお、北陸本線に乗り入れする新快速の標準的な所要時間は、湖西線経由で敦賀駅から京都駅までが約95分、大阪駅までで約125分、三ノ宮駅までで約145分、姫路駅までで約185 - 190分である。また米原駅経由はさらに15分ほど所要時間が延びる。もともと湖西地区と敦賀市の流動はほとんどなく、湖北・湖東地区と敦賀市の流動はそれなりにあるため、敦賀駅発着の新快速は、昼間は湖西線経由とし、それ以外は米原駅経由になっている。そのため朝夕時間帯には接続時分や湖西線内での所要時間などにより、米原駅経由のほうが早くなる場合もある。
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