発酵前の調整
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/15 02:49 UTC 版)
ワイナリーでブドウを処理する最初の段階は、醸造に必用な果汁を不要な部分から分離することである。ここから続く工程は、できあがるワインの品質を大きく左右する。ブドウの房は通常揺すられながら潰される。適度に潰すことにより、果実を破裂させ、果汁と果肉を放出させる(黒ブドウから白ワインを製造する場合には、果実の早すぎる破砕はムストが着色する原因となるため、この工程は使用出来ない)。揺さぶったり除梗することで、ブドウの房から梗を分離すると、圧搾時にワインに草の匂いが着くのを防ぐことが出来る。皮は破砕されず、果汁は透き通った黄色のままである。 ブドウの品質が良ければ、白ブドウの皮を果汁に浸漬させるマセレーション(スキンコンタクト) を行うことができる。発酵前にマセレーションを行う場合、一般的に発酵の開始を遅らせるために温度制御が行われる。マセレーションでは、主に皮に含まれるブドウ品種に固有なアロマおよびそれらの前駆物質をより抽出するために行われる。コロイド(大きなペクチン型分子)の比率やワインの熟成のポテンシャルが低いと、酸度も低くなる。マセレーションの最適な実行のためには、完全に除梗を行うこと、穏やかに破砕すること、および果汁の酸化を防ぐために亜硫酸塩を添加することが必要である。マセレーションを行う時間は、ブドウ品種、マセレーション温度、ブドウの成熟度、および土壌の性質に依存する が、典型的には18℃で5 - 18時間である。この手法を用いて生産されたワインはスキンコンタクトワインと呼ばれる事がある。 破砕され除梗された収穫物は、次に圧搾される。圧搾の手法も潜在的にワインの品質に影響する。1980年代以降、空気圧式の圧搾は作業改善が行われ、気密状態で作業し、ブドウを傷付けないように果汁を抽出できるよう圧力を細かく制御するようになった。moût de goutte (ムー・ド・グート、ムストの雫の意)は、圧搾する前(圧搾に向かう最中)に破砕された果実から自重で自然に流れでる果汁のことを指す。あらかじめブドウを破砕することでムー・ド・グートの比率が増え、さらにブドウの自重より強い荷重をかけることでより高品質な果汁が得られる。moût de presse(ムー・ド・プレス、圧搾したムストの意)は、ブドウをさらに強くプレスすることによって流れ出る果汁のことを指す。これにより、ブドウの良いところも悪いところも濃縮することになる。アロマ、コロイド、あるいはフェノール化合物を豊富に含むが、傷んだブドウのカビ臭さや未成熟なブドウによる野菜の臭いのような異臭が際立つことにもなる。ムー・ド・グートとムー・ド・プレスをブレンドして使うか否かは、ブドウの健全さ、圧搾の方法、および造ろうとしているワインのスタイルに依存する。圧搾前にブドウを操作すると、搾り粕の量が増え、プレスが複雑になる。高品質のワインを作る際はムー・ド・プレスは使われないか、またはごく限定的な量だけが使われる。
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