画風・題材
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/25 07:34 UTC 版)
「ヴィクトル・ブローネル」の記事における「画風・題材」の解説
既成の秩序を否定・破壊し、無意味化しようとするダダイスムから、渡仏を機に、むしろ無意味に意味を見いだし、無意識、夢、不条理を表現することで現実を越えようとするシュルレアリスムに向かったブローネルは、「滑稽で夢幻的で不安を呼び起こす強迫的な心象」を描き、「不可視な世界を可視化するための表現」を探究した。とりわけ大きな影響を与えたのはジョルジョ・デ・キリコの形而上絵画であった。 一方、第二次大戦中に多くのシュルレアリストが米国に亡命し、ニューヨークを拠点として活動した時期、ブローネルはオート=アルプ県の小村で制作を続けたが、油絵を描くための画布がなかったので、針金、石、土、木の葉などを使った。ある日、デュランス川のほとりを歩いているときに、川辺の石に白い線がたくさん走っているのを見て、「この非常に美しい効果を自分のものにしたい」(ルネ・シャールへの手紙)と思い、蝋で溶いた絵具に熱を加えながら板に固定する蝋画(エンカウスティーク)の技法を「再発見」した。2000年も前から存在したとされる技法だが、ブローネルの場合は、板に蝋を流した後、細い刃物で彫りを入れ、ここにクルミの樹皮や果皮から採った染料やインクを流し込み、最後に染料を拭き取りながら溝に染み込ませるという方法であった。仕上がった作品は、人物を図案化したプリミティヴィズムや造形芸術のような印象を与える。恐怖と孤独、そして貧困に苦しんだ時期であったが、創作においては逆に、秘教(エソテリシズム)、カバラ(ユダヤ教の神秘主義思想)、錬金術などに対する関心を深め、独自の作品世界を切り開くことになった。 これは、ブルトンを中心とするシュルレアリスムの「運動」から離れた後も同様であり、以後は特定の流派や運動に属すことなく、エロティシズム、(ブルトンが提唱した)客観的偶然、夢や無意識の表象、神秘学(オカルティズム)、秘教・密教、人格の分離、精神分析、プリミティヴィズム、さらには伝説上の人物、古代文明の紋章のようなモチーフ(特に古代エジプトや先コロンブス期、あるいはアメリカ先住民の芸術)、ヒエラティックな(宗教・神事に関する)題材を扱った作品を制作し続けた。ブローネルは、生涯にわたってシュルレアリスムを追求し続けた画家であった。
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