生物学的脱窒素
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/18 20:16 UTC 版)
生物脱窒とも。活性汚泥法の一種で、BODだけでなく窒素を処理することも主目的とする処理法。多種の技術があるが、基本は同じである。ごく大まかに言うと、硝化工程でアンモニアを酸化して硝酸をつくり、脱窒工程でこの硝酸を使って有機物(BOD成分)を酸化分解するものである。これにより、BODと窒素を同時かつ効率的に除去することができる。 設備の配置は、脱窒槽(無酸素)-硝化槽(好気)-二次脱窒槽(無酸素)-再曝気槽(好気)-沈殿槽、のようになり、硝化槽から脱窒槽には循環液(硝化液)を大量に返すため、大型のポンプが使用される。 今日では下水道の高度処理をはじめ、浄化槽や民間排水でも広く利用されている生物学的脱窒素の技術は、屎尿処理の分野でまず実用化され、その後も改良を重ねてここまで完成されたのである。 標準脱窒素処理方式:通称、標準脱窒。当初は二段活性汚泥法(低希釈法)と呼ばれ好気性処理法として開発された。5~10倍程度に希釈し、MLSSは6000程度で運転し、原則として加温はしない。 硝化液循環法、ステップ脱窒素法、混合分解法などにわかれる。現在では浄化槽汚泥の増加に対応した運転管理により、希釈率は下げられる傾向にある。 高負荷脱窒素処理方式(高負荷):ほぼ無希釈でMLSSは12000~20000と高く取り、25~38℃に加温する。これにより、小さな水槽で処理しようとする方式で、施設ごとの特徴が強い。また、沈殿槽だけでは固液分離が不十分なので、さらに凝集分離を行っている。複数槽形式:標準脱窒とほぼ同じ設備配置で、溶存酸素濃度を調整することで効率を上げている 単一槽形式:1つの槽内に溶存酸素濃度の濃淡分布をつくり、あるいは時間を区切って投入や曝気を行うなどして、脱窒と硝化を行わせる 単一槽に後段を追加した形式:両者の折衷形。 膜分離脱窒素処理方式(高負荷膜):主処理は高負荷法と同じだが、固液分離に膜ろ過装置を使用する。膜としては精密ろ過膜、限外ろ過膜が多い。 沈殿槽に代えて膜分離原水槽と生物処理膜分離装置をおき、そのろ液を凝集処理し、凝集処理膜分離装置で処理する。膜分離により安定した処理が可能で、病原体(特に微小病原体)を除去する能力も高い。ただし、沈殿槽などに比べると膜分離装置は管理にコストを要する。 浄化槽汚泥対応型脱窒素処理方式:浄化槽汚泥は、すでに脱窒素処理が行われているため、屎尿とは性状が異なり、またばらつきが激しい。そのままでは主処理のプロセスに支障を来すため、生物処理に先立って前凝集分離を行い性状を安定させる。 前凝集分離には、脱水分離方式、脱水・膜分離方式、濃縮分離(機械分離と重力沈降)方式があり、浄化槽汚泥を直接脱水する場合は直脱と呼ばれる。 浄化槽汚泥は既に安定化しているため、固液分離して汚泥として処分し、ろ液のみ水処理する(とは言っても性状の変化が大きい浄化槽汚泥を安定して脱水することは、容易ではない)ろ液はSS成分が少ないので、生物固定床や生物脱リンなどの処理方式を適用することもできる。
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