窒素除去への利用
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/23 02:56 UTC 版)
環境工学分野では主に、水中からの生物学的窒素除去に利用、研究がなされている。 代表的な廃水処理法である活性汚泥法では、好気的微生物を主体に有機物の酸化を行う。この工程に硝化作用を組み入れ、さらに脱窒工程を組み合わせることで、きわめて効率的な窒素除去が可能となる。 注意すべきは、脱窒菌の硝酸塩呼吸は好気呼吸ができない環境でやむを得ず行っているのであり、溶存酸素濃度が高い環境では進行しなくなることである。0.2mg/l以下で好気呼吸に取って代わり、0.5mg/l以上では停止する。ただし、実装置内で脱窒菌は多様な菌種と共存しているため、溶存酸素濃度がかなり高くても(ある研究では6.0mg/l)生物相内の濃度勾配により脱窒が生じる事が確認されている。この傾向は分散相、フロック、生物膜、担体・グラニュールの順で強まり、硝化と脱窒を同時進行させる設計もなされている。 装置内の反応液について酸化還元電位を測定し、反応状態を推測することができる。例えば、硝化工程直後の水は酸素が残存し-50mV以上を示す。脱窒工程に入ると電位は低下するが、-100mVを切らない場合、脱窒が進んでいない恐れが高い。逆に-200mV以下では硝酸イオンが還元されつくし、無酸素状態を超えて嫌気状態へ進みはじめている。-300mV以下はメタン発酵が生じる絶対嫌気領域で脱窒菌の生育に適さない。なお、酸化還元電位は水素イオン濃度とは異なり相対的・曖昧な指標なので、50mV単位程度で捉えるべきである。 脱窒工程では必要に応じ、有機物としてメタノールを補給する。その場合の反応方程式として下記があげられている。 N O 3 − + 1.08 C H 3 O H + H + → 0.065 C 5 H 7 N O 2 {\displaystyle {\rm {NO_{3}{}^{-}+1.08\ CH_{3}OH+H^{+}\rightarrow 0.065\ C_{5}H_{7}NO_{2}}}} (脱窒菌) + 0.47 N 2 ↑ + 0.76 C O 2 + 2.44 H 2 O {\displaystyle {\rm {+0.47\ N_{2}\uparrow +0.76\ CO_{2}+2.44\ H_{2}O}}} 硝化菌より比増殖速度が大きく、アルカリ度が硝化反応の半分ほど生じる。脱窒菌への水温の影響は通常の活性汚泥と同程度とされ、比増殖速度はむしろ生物相の中で硝酸塩呼吸の優位性を発揮できる程度によると考えられる。 実装置ではメタノールに替えて廃水中の有機物(BOD成分)の利用が広く行われ、目安として硝酸態窒素1に対しBOD3が消費され、有機汚泥0. 4が発生するとされる。これは曝気動力を要せずBOD除去が可能であることを示唆し、実際にこれを活用するべく各種の装置が設計、建設されている。 電解法など物理化学的除去法による場合が多い高濃度の産業廃液へも、条件次第で適用可能である。
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窒素除去への利用
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/04/20 03:49 UTC 版)
環境工学分野では主に、水中からの生物学的窒素除去(脱窒)の前段階として捉えられている。 関与するものはアンモニア酸化菌(もしくは亜硝酸生成菌)のNitrosomonas属、Nitorosococcus属、Nitrosospira属(Nitrosolobus属、Nitrosovibrio属を含む)亜硝酸酸化菌(もしくは硝酸生成菌)のNitrobacter属、Nitrospira属がよく知られ、合わせて単に硝化菌とも呼ばれる。これは好気的水処理工程で亜硝酸態窒素が容易に酸化されるほか、脱窒工程で厳密な区別が必要ないこと等による。この他にアンモニアを酸化する古細菌“Ca. Nitrosopumilus martimus”が発見されている。 硝化菌は基本的に通性好気化学合成独立栄養であり、アンモニア態窒素と炭酸を基質とする。これを利用し、廃水中のアンモニア態窒素を硝酸態窒素に酸化し、続く無酸素環境での硝酸塩呼吸による脱窒工程へと引き継ぐ。 反応方程式として下記があげられている。 N H 4 + + 0.103 C O 2 + 1.86 O 2 → 0.0182 C 2 H 5 N O 2 {\displaystyle {\rm {NH_{4}{}^{+}+0.103\ CO_{2}+1.86\ O_{2}\rightarrow 0.0182\ C_{2}H_{5}NO_{2}}}} (亜硝酸細菌) + 0.00245 C 2 H 7 N O 2 {\displaystyle {\rm {+0.00245\ C_{2}H_{7}NO_{2}}}} (硝酸細菌) + 0.979 N O 3 − + 1.98 H + + 0.938 H 2 O {\displaystyle {\rm {+0.979\ NO_{3}{}^{-}+1.98\ H^{+}+0.938\ H_{2}O}}} この式の要旨は、酸素とアルカリ度を大量に消費しながら、しかし硝化菌の比増殖速度が非常に小さいことである。水温の影響を強く受けるが基質濃度はほとんど影響しないため、比増殖速度は温度の関数で示されている。実施設としては、高度処理の浄化槽や下水道終末処理場における高度処理(生物学的脱窒素脱リンなど)で広く利用されている。
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