窓とステンドグラス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/18 04:55 UTC 版)
13世紀ゴシック様式の教会としては珍しいことに、『教会の聖母子』に描かれている窓はほとんどが透明な板ガラスとなっている。ジョン・L・ウォードは、身廊をめぐる多くの窓のなかで、キリスト磔刑像が浮かび上がるように描かれている窓がもっとも重要であると指摘した。この窓は鑑賞者の視線を正面から受け止めており、その描写も赤と青で彩られた花を表現した複雑なデザインのステンドグラスとなっている。この窓は透視図法がぼやけだす画面最奥部に描かれているが、すぐ背後に描かれている花をあしらったステンドグラスとの効果で「突如として画面最前面にキリスト磔刑像が出現したかのように見えはじめる」としている。 ウォードはこのような目の錯覚ともいえる現象の原因が、画面最上部へ集約する透視図法がぼやけていくためだとは考えていない。これは『創世記』に記された生命の樹に対する巧妙な暗喩で、『教会の聖母子』には「キリストの復活」の象徴が描かれているためであるとしている。キリストが磔刑に処せられている十字架の最上部に花を配するという構図は、1426年ごろにマサッチオが描いた、十字架の最上部には樹木が描かれている『キリスト磔刑』(en:Crucifixion (Masaccio)) にヒントを得た可能性がある。ウォードは、ヤン・ファン・エイクがマサッチオの作品以外からも様々な影響を受けて十字架に咲く花を描いたとし、「十字架が生命の樹となって生れ変わり、人々が見つめる中で花を咲かせた」まさにその瞬間を描こうとしたと結論付けた。
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