生物学的解釈
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/07/05 07:52 UTC 版)
ミネソタ大学の生化学者ウィリアム・H・フレイ2世は、人が泣いた後に「すっきり」するのは、ストレスに関連するホルモン、特に副腎皮質刺激ホルモンを排出することによるものだと指摘した。泣いているときに粘膜の分泌が増加する現象と合わせると、泣くこととは、ストレスホルモンの水準が高まった際にこれを処理するための人間に発達したメカニズムである、という理論を導きうる。しかし、涙が化学物質を排出する能力は限定的であり、この説も説得力に欠ける。スペイン眼科学会のフアン・ムルーベ会長は、涙腺を通過する血液の量は体の5リットルの血液と比較して小さいことを報告している。また、呼吸や汗などの他の軽度の体排泄方法とは異なり、涙はほとんどが身体に再吸収される。 人間が感情的反応として涙を生成する唯一の動物であるかは議論がなされてきた。チャールズ・ダーウィンは『人及び動物の表情について』の中で、インドゾウが悲しいときに涙をため込むさまについてロンドン動物園のインドゾウの飼育員から語られたことを記している。近年では、カルロ・V・ベリーニが泣く行為を分析し、ほとんどの動物は泣くことができるが、人間だけが心理的感情から涙を流している(weeping)と結論付けた。涙を流すことは、おそらくミラーニューロンネットワークを通じて共感を誘うとともに、頬を伝う涙のマッサージ効果によって誘発されるホルモンの放出、またはすすり泣きのリズムの解消を通じて情緒に影響を及ぼす行動である。
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