現代の豆戦車
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/12 19:19 UTC 版)
第二次世界大戦中に能力不足がはっきりしたため、大規模に配備している国はない。戦後の世界には「豆戦車」というカテゴリーの車両は存在しないが、実質的に「豆戦車」と呼べるものは存在する。その場合、戦後の世界の軽戦車の重量が20トン近くにまで上がっているので、10トン前後までの装輪式または装軌式装甲戦闘車両は「豆戦車」と便宜的に呼んでも差し支えないであろう。今日でも使用されている豆戦車の子孫は、軽便さを生かして空挺部隊や偵察部隊で補助的に使われている。つまりは早期展開や国外派遣、歩兵直協といった限定的な任務を担っている。 スコーピオン、ヴィーゼル、オントスやASU-57が代表例。日本の陸上自衛隊では2008年まで60式自走無反動砲が普通科の歩兵直協に使用されていた。 なお、主力戦車よりも安価軽便な代替戦闘車両としては、小型・軽量でライフサイクルコストが低い装輪装甲車が配備され、かつての豆戦車に近い地位で配備されている。 武装としては、無反動砲・低反動砲・機関砲・対戦車ミサイル・個人携行式地対空ミサイル・迫撃砲・グレネードランチャー(自動擲弾発射機)・重機関銃などがあり、複数を組み合わせる場合もある。 こうした従来型装甲戦闘車両の流れとは別に、近年はアメリカ・ロシアなどで開発され、急速に発達しつつある、装輪/装軌式の無人ロボット兵器の存在を、新たな豆戦車として挙げることができよう。これらの無人ロボット兵器は、初期の爆発物の処理といった防御的役割から、現在では攻撃的役割を担うまでに進化している。人命の喪失および防御および乗員の搭乗スペースを考慮する必要のない無人ロボット兵器には、装甲が無い(薄い)ことは、さしたるデメリットではない。むしろ、軽量、輸送の便利さ、安価、省資源、製造の容易さ、数を揃えることができる=被害を分散できる=戦力の低下を緩やかにできる、対人用途に向いている、車体が小型のわりに武装が強力、射撃が正確、被害をかえりみずリスクの高い作戦に投入することができるなど、従来の豆戦車と同様の利点を最大限に生かすことができるメリットがある。 従来の豆戦車が戦闘車両として廃れた理由は、乗員を防護できないからである。人命を最もコストが高いものとすると、最もコストパフォーマンスの悪い兵器であり、乗員を危険に晒すわりに、(防御力が低い点では同様の対戦車自走砲と違い)それに見合う火力も無く貧弱だったからである。無人ロボット兵器(無人戦車)にはそうしたデメリットを覆す可能性がある。 例としてロシアのUGV(Unmanned Ground Vehicle、無人地上車両)「ウラン-9 (Uran-9)」を挙げる。重量:10トン(重量的には軽戦車に分類も可)。全長(砲身含):5.12m。全幅:2.53m。全高(機器含):2.5m。速度:整地 35㎞/h 不整地 10km/h。武装:2A72 30㎜機関砲×1、PKT/PKTM 7.62㎜機関銃×1、9M120 Ataka対戦車ミサイル×4、Shmel-M サーモバリックロケットランチャー×6ないし12。火力支援を目的とし、専用車両のオペレーターによって遠隔操作(3㎞以内)される。現在の技術では(また倫理的にも)、オペレーターの介在が必要であり、未だAIによる完全自律にまでは至っていない。
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