特異な運動特性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/10 12:55 UTC 版)
シンケージ シンケージとは滑走艇などが高速で水上を滑走(プレーニング)することにより、船底の圧力がベルヌーイの法則により下がり、船が下方へと引かれる現象。 バウダイビング(Bow diving) バウダイビングは、船首が波に突っ込んでそのまま沈み込んでしまうという、高速船で起こる危険な現象である。追波と向波の両方で発生するが、追波中の場合には波乗りのように加速が付くことがあり、より危険となる。 バウダイビングに似た現象に、青波(あおなみ、Green water)がある。青波は波そのものが大きく、船首に波がそのまま乗ってくる状態である。青波も大きなエネルギーを持っており、FRP製のコンバーチブルタイプのプレジャーボートでは、フライブリッジごと引き剥がされる場合がある。 ポーポイジング(Porpoising) 高速で水上を航走するモーターボート等の小型船では、船底で発生する揚力だけで船体を支える滑走(プレーニング)状態の時に飛び上がっては船底を水面に打ち付けることを繰り返して強い衝撃を乗員が受けて同時に舵が効かなくなる「ポーポイジング」という現象が発生することがある。 ポーポイジングという名前はネズミイルカの英語名「Porpoise」から来ており、ここであげたモーターボートの例以外にも、飛行機や飛行艇、水上機、潜水艦などの同様の運動に対して使われる。 ブローチング(Broaching) 船が後方から強い波を受けて波の斜面を下る形の波乗り状態になり、船の速度と波の速度が同じになると舵が効かなくなる。そのまま波の谷底付近で船の方向が急旋回してしまい、90度横向きになると同時に遠心力で船体が横向きの力を受ける現象を「ブローチング」と呼ぶ。時には船体が横倒しになる事がある。 ブローチングを避けるため、後方から波を受ける時は速度を落とす必要がある。 また、帆船では、風による推進力が舵の制御能力を超えた場合、ブローチングに至る場合がある。 パラメトリック横揺れ 船体が水面と接している線を水線と呼び、その水線で囲まれた面は「水線面」と呼ばれる。言い換えれば、水線面は船体と水面の交差する面である。 水線面の面積は復原力にとって重要な要素であり、水線面面積の増減によって復原力係数が変化する。波浪によって水面が上下することでこの水線面の面積が減少・増大を繰り返し、波による水線面面積の周期的な変化は同時に復原力係数の周期的な変化をもたらす。 復原力係数の変動が船体固有の横揺れ周期の半分になった時、船体の横揺れが増幅されて「パラメトリック横揺れ」と呼ばれる強い横揺れが発生することがある。パラメトリック横揺れでは横揺れの周期1に対して縦揺れの周期は半分で同調するため、2回の縦揺れの間に1回の横揺れを起こすことになる。 追波を受ける状態ではパラメトリック横揺れの発生リスクが高くなるが、向波の中でも発生することがある。高速船のような水線面積の変化が大きな船型の船では発生しやすく、21世紀初頭の最近登場したバトックフロー船型の船では横波でも発生することが確認されている。 制限水路影響 制限水路影響とは水深が浅かったり水路幅が狭かったりする場合に起こる現象である。下記に示すようないくつかの典型的な状況例のいずれもが、その原理は1つであり、水面下の船体の近くに固定された平面や流水とは別の動きをする表面がある場合、船体とその面との間の流水だけが流れが早くなり、ベルヌーイの定理が示す効果によってその部分での圧力が周囲に比べて下がるため、船体が引かれて思わぬ動きをするというものである。浅水影響 「浅水影響」は船底が水底に近いために、船底部周囲の水の流速が早くなり船体が下方へと引かれ喫水が大きくなることである。 側壁影響 「側壁影響」は運河などの通航時に船体が側壁に近い場所を航行すると船体と側壁との間の水が早く流れる場合に側壁に吸い付けられるように引かれることである。また、多くの船体は船首は船尾に比べて細身であるため、側壁に引かれる力の中心は船の重心より少し後方側になり、船尾側がより強く引かれることになるため船体が回頭する。このため、当て舵をとるなど正しい操船には高度な技術が求められる。 傾斜海底影響 「傾斜海底影響」は浅水影響の特殊例であり、水底が水平ではなく傾いているとき、下方へと引かれる場所に左右での違いが生じて船体が浅い方へよっていくことである。浅水影響と同じく船尾側がより強く引かれるために船体が回頭する。水底の細かな水深の違いは船上からは判らないために、正しい当て舵量を予測するのはかなり困難となる。 2船接近影響 「2船接近影響」は側壁や水底ではなく、他の船との相互の干渉によって側壁影響とほぼ同じ現象がより強く起こることである。 長年の経験を積んだ大型船の船長でも離岸時に制限水路影響を考慮せずに岸壁から十分に離れないまま全速前進をかけてしまうことがある。この結果、「側壁影響」によって船体は岸壁に寄り、岸壁にこすり付けて船に穴を開け、ビットを壊してしまう事故が起こる。
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