無人宇宙機のドッキング
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/24 06:21 UTC 版)
「宇宙機のドッキングおよび係留」の記事における「無人宇宙機のドッキング」の解説
宇宙飛行の歴史における最初の50年間において、ドッキングおよび係留の飛行計画の主な目的のほとんどは飛行士の移送、宇宙ステーションの建設および補給、そしてそれらの飛行のための試験であった (例:コスモス186号と188号のドッキング)。従って、一般的にその飛行計画に参加している宇宙機の少なくとも1機は「有人」であり、目標とされる機体は (たとえば宇宙ステーションや月着陸船のように) 与圧された居住可能空間を持っていた。例外は (たとえば無人のサリュート7号にドッキングしたコスモス1443号やプログレス23号、あるいは無人の宇宙ステーションミールにドッキングしたプログレスM1-5のような) ソ連の少数の完全無人飛行計画のみであった。他にはハッブル宇宙望遠鏡の5回にわたる補修計画において、有人のスペースシャトルがハッブルを係留した飛行などが例外として挙げられる。 しかしながら2015年以降、経費削減を重視する多くの無人商業衛星によるドッキング計画が始まることにより、この状況は大きく変わることになる。2011年初頭には商業軌道輸送サービスを行う2つの企業が、他の無人宇宙機に自動または遠隔操作で補給を行う、新型無人宇宙補給機を開発する計画を発表した。特筆すべきなのは、それらの補給機はどちらも、ドッキングあるいは宇宙空間で補給されることを前提で設計されたものではない衛星と結合することを目標にしているということである。 これらのビジネスモデルの運用は、初期段階では原則的に対地同期軌道に近い軌道を周回することになるが、大きなデルタV軌道変更をするような飛行も見込まれている。 2007年のオービタル・エキスプレス (Orbital Express) 計画では、2機の無人衛星とドッキングすることが要求される新型商業衛星補給飛行について、すでに2社が公表している。オービタル・エキスプレスはアメリカ政府により進められている計画で、軌道上で燃料を補給したり部分系統を補充するよう根本から設計されている2機の衛星を使用し、宇宙空間で衛星の補給作業を行うことを試験するものである。 宇宙インフラサービス (Space Infrastructure Servicing, SIS) はカナダの航空宇宙企業マクドナルド社 (MacDonald, Dettwiler and Associates) によって開発された宇宙機で、対地同期軌道にある通信衛星のための小規模な宇宙燃料貯蔵庫として運用される。インテルサット社は最初の実証衛星の共同出資者であり、その衛星を目標にすることが契約の必要条件となっている。発射は2015年ごろを目標としている 飛行延長機 (Mission Extension Vehicle, MEV)は、航空宇宙企業のUSスペース社とアライアント・テックシステムズ社が50対50の出資をしている合弁企業であるヴィヴィサット (ViviSat) 社によって開発された宇宙機で、宇宙空間における小規模な衛星再補給機として機能する。MEVはドッキングはするが燃料の移し替えは行わず、それよりも目標の衛星に姿勢制御の能力を与えるため、自身の姿勢制御システムを使用する予定である。 SISとMEVはそれぞれ異なるドッキング技術を用いることになる。SISがアポジキックモーターの周囲にリング状のアタッチメントを付ける一方で、MEV機はいくらか一般的な、キックモーターのノズルの中に探針を挿入する方式を用いる。 無人ドッキングのための装置を取りつけられた宇宙機で最も有名なものは、ハッブル宇宙望遠鏡である。2009年のシャトルSTS-125の飛行では、望遠鏡の本体後部に暫定的把持機構 (Soft-Capture Mechanism, SCM) が設置された。SCMは寿命を迎えたハッブルが軌道を離脱する際、無人の宇宙機と与圧なしのドッキングをするときに使用されることになっている。またSCMはオリオンとドッキングする可能性に備えるため、NASAドッキング機構の接続部と互換性を持つように設計されている。SCMはランデブーや把持の機構の複雑さを、ハッブルをシャトルで把持し補修した5回にわたる飛行で使用されたものと比較し、大幅に減少させることになる[要出典]。NDSはAPAS-95の機構と若干の類似性を帯びてはいるが、互換性は持っていない。
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