漢の敵としての曹操とは? わかりやすく解説

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漢の敵としての曹操

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/02 03:04 UTC 版)

三国志演義の成立史」の記事における「漢の敵としての曹操」の解説

演義』における曹操は、小ずるい悪党どころか、奸絶と称されるほどの巨悪として君臨する。これは上記のような曹操の詐譎という性格のみによるものではなく、『演義』を最終的に完成させた儒教的知識人の、曹操への評価反映されたものである曹操は、後漢時代儒教的名士である「清流」と対立し目の敵とされた濁流=宦官の孫であり、また最終的な漢朝簒奪者でもある。曹操自身は自らを周の文王なぞらえ簒奪には及ばなかったが、曹操の死の直後に子の曹丕献帝禅譲強要して魏を建国したことから、漢を聖徳王朝と見なす儒教的観点から見ればそのものだった。また曹操後漢王朝官吏登用基準とされた儒教的道徳よりも、個人才覚重んじた曹操発した求賢令(210年)は「才能がある者なら下賤の者でも道徳なき者でも推挙せよ」という唯才主義前面押し出したのである。さらに儒教に変わる新たな価値観として、文学称揚し建安文学主導し一方で儒教的名士である孔融楊修殺したこうした曹操言動儒教的価値観から見れば異端以外の何者でもなく、激し批判対象となったそれゆえに『演義』で強調される曹操残忍性・狡猾性は、儒教忠節対象であり、理想化されていた漢王朝皇室に対して行為顕著に現れる第20回では許田狩猟行った際に、献帝獲物曹操が平気で横取りし憤慨した関羽曹操殺そうと息巻いて劉備抑制される(後の華容道の場面との対比となっている)。また第66回では、伏完造反計画露呈した際、捕らえられた娘の伏皇后に対して曹操自らが罵倒しその場打ち殺させるという残忍さ見せ、毛宗崗も註釈痛憤している。この件は裴注の『曹瞞伝』を元に作られ場面であるが、曹操自らが皇后罵倒して殺害させたとするのは『演義』の創作である。こういった漢室への悪行は、ライバル劉備漢室末裔という高貴性を受け継いでいるのと対照的にことさらに簒奪者としての悪印象植え付けるための措置でもある。『演義編者にとって王朝簒奪許し難い悪行であり、憎悪対象曹操のみならずその臣下にまで及んだ。たとえば献帝から曹丕への禅譲が行われた際に、皇帝の璽綬を奉戴する役割だった華歆は、正史では清廉潔白謹厳実直能吏として記述されているが、『演義』では正反対卑賤陋劣な人物として曲筆されている。 悪の面を強調する一方で長所削ぎ落とすことも行われた正史や『通鑑』には、魏臣が曹操褒め称えたり、曹操過去因縁囚われ敵方にいた武将抜擢重用する記述少なくない。しかしそうした話も、全体の筋に関係がないものは、ことごとく削除されている(たとえば臧覇・畢諶・魏种らの登用など)。とはいえ演義』は、筋の展開に必然性がある場面であれば、史書由来する曹操優れた面の記載排除することはしなかった。戦場鮮やかな詩賦詠み外交調略駆使して馬超張魯などの勢力を操る一方陳宮死に涙し関羽趙雲への思慕隠さず能力重視人材活用する姿勢など、文学者としての顔、スケール大きな戦略家としての側面人材貪欲に求め名君としての魅力随所織り込まれている。これにより人物像に厚みが増し曹操単純な悪玉ではなく主人公たる劉備孔明らにとって、乗り越えるべき巨大な障碍として立ちふさがる大いなる敵」としての存在感持った人物として描かれた。それこそ曹操が「奸絶」と評されたゆえんである。

※この「漢の敵としての曹操」の解説は、「三国志演義の成立史」の解説の一部です。
「漢の敵としての曹操」を含む「三国志演義の成立史」の記事については、「三国志演義の成立史」の概要を参照ください。

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