消防・監獄職員への団結権付与
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/13 14:22 UTC 版)
「労働基本権」の記事における「消防・監獄職員への団結権付与」の解説
同じく中間報告において「消防職員及び監獄において勤務する職員への、自ら選択する団体を設立する権利の付与」が勧告されているが、これに対して日本政府は以下のとおり見解を示し、消防職員及び監獄職員の任務はILO第87号条約第9条の「警察」に含まれるとしている。 消防職員 「日本の消防は、火災、風水害、地震等の災害が多発する国土の特殊な条件下で、交通制限権、付近にいる者の協力要請権、住宅侵入権、消火活動中の緊急措置権として近隣建物を破壊する権限を行使しつつ、火災を予防し、警戒し及び鎮圧し、国民の生命身体及び財産を火災から保護するとともに、火災又は地震等の災害による被害を軽減し、もって安寧秩序を保持し、社会公共の福祉の増進に資することを目的とする。こうした業務内容や歴史的沿革、運営状況から、日本の消防は保安警察の一部と解されており、ILO第87号条約第9条の「警察」に含まれるものである。 このことは、結社の自由委員会第12次報告および第54次報告が認めるところであり、このようにILOが我が国の見解を認めたことから、当該条約を批准したものである。このような経緯からも、日本の消防職員の団結禁止はILO条約に違反するものではない。 消防職員の団結権問題は国内問題として解決すべき問題であり、1995年、旧自治省及び消防庁と地方公務員の代表的労働組合である全日本自治団体労働組合(自治労)の合意の下、勤務条件の決定等への消防職員の参加を保障し、その権利保護の趣旨に沿い、かつ国民的コンセンサスが得られる解決策として消防職員委員会制度が導入された。なお、ILOにおいて、このような解決策を合意したことを満足をもって歓迎するとされ、その合意内容を反映した法改正等を行うことを要請されたところである(1995年)。 政府としては、当該制度が円滑に運用され、定着し、効果を上げることが最も重要であると認識している。」 刑事施設において勤務する職員 「監獄(現・刑事施設)において勤務する職員は、拘禁刑に処せられた者、刑事被告人、被疑者及び死刑の言い渡しを受けた者を監獄に拘禁し、その拘禁を確保することにより、社会防衛を図るという任務を担っている。そのため、職員に強固な統制と厳格な規律が求められるとともに、職務上の指揮命令系統が厳格に確保されることが必要不可欠である。このような監獄職員の任務は、ILO第87号条約第9条の趣旨にかんがみ、同条に言う警察に含まれているものと考える。」 以上の日本政府の反論に対してILOは、日本自治体労働組合総連合(自治労連)と消防職員ネットワーク(FFN)が2008年10月13日提出した、「消防職員委員会制度の実情」報告を検証した結果、消防職員の団結権に関して実質的に前進していないことに、結果として「消防職員委員会の役割には、制約があることが明らかになった」とし、「消防職員に対する団結権を確実に保障するために、すでに行われているか、検討されている法的追加措置について次回報告で示すこと」と疑義を呈している。 なお、PFIの結果として、全国4か所の「民活刑務所」においては、「団結権すら有しない公務員たる刑務所職員と、争議権まで有する民間委託企業の労働者が同じ刑務所内で就労するという事態」になっている旨、濱口桂一郎により指摘されている。
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