浅野セメントの経営支配
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「五日市鉄道」の記事における「浅野セメントの経営支配」の解説
1910-1920年代は日本のセメント生産が急増していた時期であった。浅野セメント(浅野財閥)は関東地方に深川工場と1917年(大正6年)に操業開始した川崎工場を所有しており、川崎工場用の原料の石灰石は青梅鉄道沿線より調達していた。しかし石灰石採掘販売を兼業していた青梅鉄道は諸般の事情から採掘量が伸び悩んでいた。そのため浅野セメントは直営の石灰石採掘を決断し1920年(大正9年)に青梅鉄道より二俣尾の雷電山及び日向和田での採掘権を買収した。ところが主力採掘場としていた雷電山の石灰石の埋蔵量がさほどではないらしいことが判明したため、やむなく代替の採掘場をさがすこととなった。そして大久野村の勝峰山の石灰石の埋蔵量が豊富であることを突き止めた。ただ勝峰山は青梅鉄道から離れており新たに輸送手段を確保する必要があった。そこで俎上に挙げられたのが計画中の五日市鉄道であった。そもそも勝峰山までの路線を計画したのは発起人たち自らで石灰石資源開発を目論んでおり、発起人に浅野セメント関係者の名前はなかったが、1922年(大正11年)12月の第一回株主総会で浅野泰治郎が取締役に就任し泰治郎名義で1000株所有の大株主となった。 ところが資金不足で完成が危ぶまれていたにもかかわらず浅野セメントは小机らの再三の面会要請に応じなかった。それは地元が石灰採掘権を手放すことに抵抗し土地を売らず、直営を目指す浅野セメントと対立していたためであった。そうしている間に秋川水力電気全資産を担保にするまで追い詰められてから、ようやく浅野セメントは援助をすることになった。1924年(大正13年)1月に五日市鉄道と浅野セメントとの間で結ばれた契約は浅野セメントは総計3000余株を出資する。5万円を出資する。大久野駅、岩井駅から採掘場に至る引込み線の建設費用10万円を負担する。というものであったが、附帯条件として重役2名を送り込み、石灰山をふくむ大久野地区の土地買収の責任の一切を五日市鉄道が引き受けるという厳しい条件がつけられていた。こうして浅野セメントは同年5月までに発行株式2万株中約5千株を取得、6月には金子喜代太(浅野セメント取締役)と舟塚芳次郎が取締役に就任した。なおこの契約後の4月に小机が脳溢血のため死亡した。 ようやく資金の目処はつき、建設中止の危機は避けられたが、さまざまな困難が待ち受けていた。大久野村の土地買収では土地収用法の適用をうけることにしたが所有者が行政訴訟をおこしたため長い係争の末に五日市鉄道の主張は認められたが、武蔵岩井への開通は遅れることになった。また雷電山及び日向和田での採掘権を売却した青梅鉄道は浅野セメントが勝峰山の石灰石採掘にシフトされると貨物輸送が減少するばかりでなく五日市鉄道が拝島から立川に延長する(後述)と勝峰山の石灰石輸送も得られなくなる可能性がでていた。そのため青梅鉄道は勝峰山の採掘予定地に隣接した未買収用地約4町2反を買収しそれを浅野セメントに転売する見返りに採掘した石灰石の輸送を青梅鉄道経由にするよう要求した。浅野セメントは要求を飲む代わりに割引運賃を求めることにし1925年(大正14年)7月に売買契約が成立したが将来も青梅鉄道に石灰石の輸送を担わせることの言及は避けた 大株主の変遷1922年下期1923年上期1925年下期1927年上期1929年上期1933年上期1937年上期内山安兵衛△ 800 1,000 1,000 2,000 1,000 1,000 小机三造△ 800 1,000 小机武△ 500 1,000 岸右鉅△ 800 800 紅林七五郎△ 500 浅野泰治郎▲ 1,000 3,245 12,735 2,000 金子喜代太▲ 1,000 2,000 2,000 2,000 舟塚芳次郎▲ 1,000 2,000 1,000 浅野良三▲ 1,000 2,000 2,000 浅野総一郎▲ 2,000 2,100 浅野セメント▲ 2,125 10,860 12,760 25,420 総株数 20,000 20,000 20,000 40,000 40,000 40,000 40,000 株主数 246 246 271 272 272 259 257 △は西多摩郡在住▲は浅野セメント関係者 「五日市鉄道における大株主の変遷」『日本の地方民鉄と地域社会』115頁より西多摩郡在住者と浅野セメント関係者のみ抽出
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