沖縄戦の作戦指揮に対するアメリカ国内での批判
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/14 06:17 UTC 版)
「沖縄戦」の記事における「沖縄戦の作戦指揮に対するアメリカ国内での批判」の解説
沖縄戦には、戦死したアーニー・パイルを含む多くの従軍記者が軍の作戦に帯同しており、現地から詳細な報道を行っていたが、今日でもその記者らが残した写真や映像が大量に残されている。 その数はカメラマンや映写技師などのスタッフも含めて「一個大隊」に達した とも言われる大人数であったが、報道の自由はある程度保証されており、軍の指揮に対する批判も容認されていた。 中でもニューヨーク・ヘラルド・トリビューン紙の従軍記者ホーマー・ビガードが首里防衛線での攻防でのアメリカ軍の苦戦を報道した際に、第10軍司令バックナー中将が海軍や海兵隊らの防衛線背後への再上陸案を採用せずに、正面からの正攻法を採ったことを、フットボールの試合に例えて「エンド・ランの代わりに、ラインの真ん中に突っ込む様だ」と揶揄した事で、バックナーの指揮への批判が浮上し、ワシントン・スター紙がコラムで「沖縄での軍事的大失敗に関する真実(中略)なぜに揉み消されるのか」と痛切に批判したことから議論が白熱した。 連合軍総司令官ダグラス・マッカーサーも論戦に加わり「バックナーは、日本軍が撤退後に南部を攻撃する必要はなかった。牛島中将の残存部隊を沖縄の一部に閉じ込めておいても、沖縄は日本侵攻の基地として十分使用でき、バックナーのゴリ押し戦略よりも損害は少なくて済んだ」とバックナーを非難している。ヴァンデグリフト海兵隊総司令も 、保守系新聞「アメリカン・デイリー」の社主デイヴィット・ローレンス(英語版)との対談ではバックナーに批判的な発言をしていた。また、この対談後にローレンスは沖縄作戦を失敗と断じ「真珠湾を上回る、無能ぶりを示した事例」とバックナーを舌鋒鋭く批判している。 一方で陸海軍の対立を懸念し、海軍はバックナー批判沈静化のため、フォレスタル海軍長官、ミッチャー第58任務部隊司令など中央から現場までの有力者がバックナーを擁護する声明を発表している。特にニミッツは、沖縄で作戦会議をした際に、バックナーの挑戦的で不遜な態度に激昂し、更迭を匂わす厳しい言葉を浴びせたこともあったが、グアム島で戦時中では異例となる76名の記者との沖縄戦での問題点の公開討議を開催し、その討議でバックナー擁護の姿勢を示し、陸海軍対立の芽を摘み取ろうと腐心している。 沖縄戦による大損害は、後にアメリカ議会でも問題となり、議会は軍に作戦指揮に対する調査を指示している。 以上の様に、アメリカの沖縄戦に対する軍事的な評価は思いのほか低く、政治学者五百籏頭真は戦後にアメリカの公文書を調査していた際に、アメリカが沖縄戦と先の硫黄島の戦いについては、アメリカの方が敗者意識を持っている事に驚いたと著書に書いている。
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