機器・制御システム
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/09 02:54 UTC 版)
「JR東日本キハE200形気動車」の記事における「機器・制御システム」の解説
ディーゼルエンジンとリチウムイオン蓄電池(屋根上に設置)を組み合わせ、車輪の駆動にかご形三相誘導電動機を使用する。ハイブリッドシステムは日立製作所が開発したもので、エンジンの動力を直接駆動力には使用せず、発電機を回転させる電力用として使用され、発電機からの電力と搭載された蓄電池の電力と組合わせてモーターを駆動する「シリーズハイブリッド」方式と呼ばれるシステムであり、電車の技術が最大限に使用できるのが特徴である。システムを構成する機器類は、エンジンとそれに直結した発電機を持つエンジン発電機、主回路用蓄電池、主変換装置、輪軸駆動用のモーターで構成されており、力行時には、主回路用蓄電池からの電力または主回路用蓄電池とエンジン発電機からの両方の電力を使用して、主変換装置に内蔵されたVVVFインバータ装置により、VVVFインバータ制御でモーター(誘導電動機)を駆動させる。制動時には、回生ブレーキによりモーターから発生した電力を、VVVFインバータ装置を介して主回路用蓄電池に充電する。また、エンジン発電機の起動または停止は、主回路用蓄電池の充電状態により、自動的に行われている。また、「エネルギー管理制御システム」を搭載しており、各装置からの情報を集約して、最適な動作の指示を各装置に行うことで、エンジン発電機と最適な蓄電池の充放電の制御を行なっている。 エンジン発電機には、排気ガス対策のため、コモンレール方式の燃料噴射装置を使用した直噴式直列6気筒横形ディーゼルエンジン(コマツ製SA6D140HE-2、JR形式はDMF15HZ 定格出力331kW(450PS)定格回転数2100rpm×1)と発電機(DM113形交流発電機、出力270kW×1)を組合わせている。主回路用蓄電池には、出力密度が高く、軽量高出力のIC122形リチウムイオン電池が使用されており、1両あたりの容量は15.2kWhである。また、蓄電池に不具合が発生した場合を考慮して、2群構成として冗長性を持たせている。主制御装置には、CI16形主変換装置を搭載しており、補機類とサービス用の電源装置である静止形インバータ(SIV)と一体構成となっている。なお、補助電源装置の容量は50KVAである。 主電動機は、E231系に使用されているMT73形をベースとしたMT78形誘導電動機(定格出力95kW)を1両につき2個、動力台車に装備している。台車は、E531系で使用されている台車を基本に、キハE200系小諸方に動力台車のDT75形・小淵沢方に付随台車のTR260形を使用している。 車両の床下には、主変換装置、エンジン発電機、エンジンラジエーター、制御用蓄電池箱、ブレーキ制御装置を満載しており、そのため、車両の屋上には、集中式冷房装置を挟んで、前位に主回路用蓄電池を2個、後位に元空気だめの一部が搭載されている。また、各車には、補助電源で作動するMH3125-C600N形電動空気圧縮機(CP)を搭載している。 加速度はキハ110系相当の2.3km/h/sを有している。 なお、同じハイブリッドシステムを持つHB-E300系とは併結運転が出来る機能を有しており、実際に長野地区向けのHB-E300系との試運転時に併結試験を行っている。 ハイブリッドシステムとコモンレール式のエンジンの採用により、蓄電池を効率よく組み合わせて環境負荷の低減を図り、従来のキハ110系気動車に比べて排気中の窒素酸化物 (NOx) や粒子状物質 (PM) の60%低減を達成した。また併せて燃料消費量は起伏の激しい小海線で約10%低減を達成した。アイドリングストップにより、駅停車時の騒音は約30デシベルまで低減されている。 車両が停車→発車→加速→惰行→制動→停車するまでの車両の状態は以下の通りになる。 停車中・惰行中 エンジン発電機はアイドリングストップを行い、車両の補機類とサービス用の電源は主回路用蓄電池からの電力が補助電源装置に送られて、そこからの電力が送られる。 発車時 最初は主回路用蓄電池からの電力のみでモーターを駆動させ、約25km/h程度からエンジン発電機を起動させて、主回路用蓄電池とエンジンからの電力を併用しながらモーターを駆動させる。 加速時 主回路用蓄電池とエンジンからの電力を併用しながらモーターを駆動させる。惰行中からの場合は、エンジン発電機を起動させる。また、走行負荷の状態に応じて主回路用蓄電池の充放電を行う。 制動時 エンジン発電機を停止させ、回生ブレーキによりモーターから発生した電力を主回路用蓄電池に充電する。
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