東日本大震災に伴う崩落事故
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/16 18:23 UTC 版)
「コストコ」の記事における「東日本大震災に伴う崩落事故」の解説
2011年(平成23年)3月11日、東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)で東京都町田市の多摩境倉庫店は震度5の揺れに見舞われ、立体駐車場のスロープが崩落し、乗用車3台が下敷きとなり、2人が死亡、6人が重軽傷を負った。 市内の他の建物に大きな被害が無かったことから、警視庁は設計や施工に問題があったとみて捜査に乗り出し、2013年(平成25年)3月に、構造計算を担当した石川県野々市市の建築事務所社長(一級建築士)、最初に構造計算をした東京都豊島区の設計事務所社長、工事監理担当だった東京都港区の建築設計事務所の社長と設計部長(当時)を、業務上過失致死傷容疑で送検し、同年12月27日に東京地方検察庁立川支部が建築事務所社長(以下「A」と記述)のみを在宅起訴した。残る3人は、嫌疑不十分で不起訴とした。Aは、取材に対し「私の構造計算は正確。引き継ぎ前の担当者の計算が間違っていたか、ゼネコンの造り方に問題があったため崩落が起きた」と述べた。地震による建物崩落で刑事責任が問われるのは初。同店は2012年(平成24年)2月24日に営業を再開した。 2016年(平成28年)2月8日、東京地方裁判所立川支部は、Aに禁錮8ヶ月・執行猶予2年の判決を下した。公判で東京地方検察庁は当初「被告の設計ミスによって事故が発生した」との理由で提訴したものの、公判中に設計ミスが存在しないことが判明したため「構造が異なるスロープと店舗建物とのつなぎ目の強度を高める必要があったのに、Aが他の建築士にわかるように伝えなかった」と訴因を変更した。弁護士は「Aはつなぎ目の強度を高める設計をしており、設計図通りに施工していれば崩落しなかった」と主張し無罪を訴えていた。なお、この一審判決ではAを有罪としたものの、不起訴になった前任の設計者の方が被告よりも責任が相当大きいと言及し、被告に長期の禁錮刑を科すと処分の均衡を失すると、判決文の中で異例の指摘を行っている。 同年10月13日の東京高等裁判所判決では「被告は設計内容を書面で総括責任者らに伝えており、説明義務は果たしていた。むしろ総括責任者らの側に設計内容を確認すべき義務があった」として、Aの過失を否定し、逆転無罪となった。東京高等検察庁は10月27日に「適法な上告理由が見いだせなかった」ため、最高裁判所への上告を断念したと発表し、上告期限である翌28日0時に、無罪が確定判決となった。 刑事裁判では、実際に建築を監督した工事監理担当の建築士が不起訴となり「Aが他の建築士に設計変更内容を伝達したか」のみが争点となったため「なぜ設計図通りに施工されずに、欠陥建築が出来上がったのか」は全く未解明のままであり、Aの弁護士は控訴審判決後の会見で「検察は捜査を尽くさずに、起訴すべき相手を間違えて起訴した。訴因変更した段階で捜査をやり直すべきだった」と述べている。 その後、東京地方検察庁は不起訴処分となっていた設計責任者ら3人の建築士に対して、異例となる再捜査を行ったものの、起訴しても公判を維持することが困難と判断し、2017年7月18日に嫌疑不十分で捜査打ち切りを発表。構造が不適切な建築物が原因で死者が出たにもかかわらず、原因も判明しないまま、誰も刑事責任を取らずに捜査が終了する結果となった。
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