日本の経済協力と技術移転
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/31 03:47 UTC 版)
「東アジア共同体」の記事における「日本の経済協力と技術移転」の解説
東アジア共同体は日本にとって経済的メリットをもたらすが、同時に東アジア共同体もまた日本の積極的協力とプレゼンスを必要としている。 戦後の厳しい国内外の情勢の中、東アジア地域に対して日本は、技術協力や無償資金などの二国間協力を行ってきた。現在では、国際機関を通じた多国間援助の他、日本の政府機関が特定国に対して協力する二国間援助を行っている。このうち東アジア地域では、二国間援助として保健・医療・防災等から農業・学校や病院等のインフラ設備・産業など多岐に渡る分野への技術供与と、返済義務を課さないで資金を供与する無償資金援助及び有償資金援助が行われている。 1992年から2000年まで西側先進国の中では最大の政府開発援助(ODA)供与国となっていたが、長引く経済不況の影響でODAの削減を余儀なくされ、現在もその額は減少傾向にある。このような状況下では、限られた日本のODAをいかにアジア各国が有効利用するかが焦点になる事は必至であり、日本の特性を活かした援助政策を策定する必要がある。 近年の東アジアでは、シンガポール等のように経済成長し援助供与国となった国と開発途上国等が混在するために協力体制も多様である。急激な経済成長を遂げた中国のように、2008年以降には人材育成や技術移転などの「贈与」の一類型として技術移転を要請する場合もある。東アジアの急速な発展は先進国からの資本と技術の導入に因るところが多いが、それらを十分に利用するには技術者の果たした役割も大きい。しかしながら、技術の自己開発力においては極めて低水準にあり、それこそが東アジア最大の弱みとなっている。故に、今後の東アジアの発展には技術力向上が欠かせない。新しい技術の移転についてはキャッチアップされる日本にとってはデメリットが大変大きい為、慎重論が大勢を占めるが、一方で、東アジアにおける技術者の教育を含め技術移転に積極的な姿勢を示し、それをまた日本の新技術開発に繋げるべきとする声も少数だが存在する。 ただし、実際に技術移転が円滑に進んだとしても、日本を含め、第二次世界大戦以降長らく基礎研究を軽んじてきた東アジアに欧州、米国と対抗できる創造的な技術が確立されるという保証はない。また欧米諸国が自身の基礎研究の恩恵を、彼らをゆうに凌ぐ労働力と領土を持つ共同体に分け与えることを快く思わない事も考えられ、結果的には技術の拠所の見かけが変わるだけとも言え、米国に代表される欧米諸国がこれを妨害する事も考えられる。 また、これまで日本からの技術移転というと理工系分野が中心であったが、2000年前後からは法律分野における法整備支援も、東南アジアを中心とした各国のニーズに応える形で次第に広がっている。法整備支援の特色は、専門的知見の普及にとどまらず、法律という分野の性質上、各国のガバナンス強化、投資環境整備と直接結び付く点にある。そのため、2010年6月に内閣が公表した「東アジア共同体構想への今後の取組について」においても、域内に切れ目のないビジネス環境を整備するための手法の1つとして明示されている。
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