日本のトレイン・シェッド
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/07/05 01:19 UTC 版)
「トレイン・シェッド」の記事における「日本のトレイン・シェッド」の解説
日本では、欧米の主要駅のような巨大トレイン・シェッドが建設されることはなかった。明治時代に鉄道が開業したばかりの頃は、駅にかけられる費用も少なく、必要最低限の設備で済まされた。また井上勝の「工事は全て実用向きを主とすべし」という方針により、駅は実用本位に設計されトレイン・シェッドのような装飾性の高い施設は作られなかったのである。 1914年に開業した東京駅は、「日本の玄関」たることを意識して設計された最初の駅であるが、ここでもトレイン・シェッドは設けられなかった。東京駅の原案を作成したドイツ人技術者フランツ・バルツァーは、費用面の問題のほか、温暖な日本では気候に対する保護はそれほど重要ではないこと、煤塵の多い日本の石炭では煤がシェッド内に充満するおそれのあること、シェッドを作ってしまうと将来の駅の拡張が難しくなること等を指摘し、トレイン・シェッドは不要であると論じた。 私鉄では阪急神戸三宮駅でトレイン・シェッドが採用されており、ホームの全長を覆わない小規模なものでは叡山電鉄八瀬比叡山口駅、近畿日本鉄道吉野駅、JR西日本天王寺駅阪和線ホーム(1929年開設時は阪和電気鉄道によるもの)などにも見られる。かつては阪急梅田駅(現大阪梅田駅)や南海難波駅、西鉄福岡駅(現西鉄福岡(天神)駅)にもトレイン・シェッドが採用されていたが、1960年代以降の駅舎改修とともに姿を消している。 近年では旧国鉄(現JR)の駅でも、蒸気機関車牽引列車の廃止や気動車の性能向上による煤塵の減少などにより、降雨や降雪、日射を防ぐことができ、景観上も良好で、ホームでの滞在環境の良い大屋根設置が増える傾向にある。二条駅(1996年)、日向市駅(2006年)、高知駅(2008年、愛称「くじらドーム」)、 旭川駅(2011年)などで、高架化とともにホームと線路を同時に覆う屋根が造られている。高知駅のものは、駅前広場の一部をも覆うものである。 この他、大阪駅(2011年)や甲子園駅(2015年)では、駅改良工事に併せて大屋根が設置されている。大阪駅では南北2つのビル(大阪ステーションシティ)の間でホームと線路群を覆う大屋根が完成したが、側面の開口部から雨が吹き込む問題が発覚したため、ホーム個別の上屋を完全に撤去するには至らず、透明な上屋に付け替えることで対応している。また、甲子園駅では阪神甲子園球場の最寄り駅でもあることから白球をイメージした大屋根を取り付けたが、ホーム全体を覆うことはできないため、大屋根からはみ出るホーム両端については平屋根としている。 降雪地帯に所在する新幹線の駅は駅全体を覆う屋根が設置されている例が多いが、八戸駅など、大規模なアーチ形状の駅もある。2020年開業の高輪ゲートウェイ駅は駅新設とともに、全ホームが覆われる構造のトレイン・シェッドを採用している。 二条駅 日向市駅 高知駅 旭川駅 大阪駅 甲子園駅 八戸駅
※この「日本のトレイン・シェッド」の解説は、「トレイン・シェッド」の解説の一部です。
「日本のトレイン・シェッド」を含む「トレイン・シェッド」の記事については、「トレイン・シェッド」の概要を参照ください。
- 日本のトレイン・シェッドのページへのリンク