日本における誤用・乱用の指摘
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/19 09:24 UTC 版)
「反知性主義」の記事における「日本における誤用・乱用の指摘」の解説
2015年に論壇などで多用され、一種の流行語となったが、単に知性の無い者として批判する際に用いられることが多い。冷泉彰彦は、この語が使われる局面は「『イデオロギー上の論敵の中にある感情論に対して敵意を持つ』ことであり、それ以上でも以下でもない」「その敵意自体も相当程度に感情論であることが多い」と指摘している。 中野剛志によると、日本の左翼の間で「反知性主義」という言葉が流行しているといい、「そもそも、『反知性主義』という言葉の使い方そのものを誤っている。」「日本では『ネトウヨは反知性主義、つまりバカだ』といったようなレッテル貼りの道具として用いられている。」と述べ、適菜収は「反知性主義とは、ピューリタンの極端な理性崇拝への反発として生まれてきたアメリカ固有の思想のことです。ネット右翼やナショナリズムとは何の関係もない。」と述べ、中野信子は「左翼は自分たちのことを知性主義者と任じているから、本当は『バカ』と言いたいけれども、それじゃ己の知性を疑われるので『反知性主義』という表現を使っている。ほとんどギャグの領域ですね。」と述べた。 小浜逸郎は「(内田樹)氏は、ホーフスタッターの歴史的な大著『アメリカの反知性主義』の権威を『こりゃ使える』とばかりひょいと借りてきて、本の中身などそっちのけで、ただ自分の反権力気分を拡散させるためにだけ利用しています。これはたいへん反知性的な振る舞いですね。」「上野千鶴子氏も思う存分これを利用していましたね。理性や知性のかけらももち合わせず、ただ感情で集まってきた人たちが、彼女の言葉に感心して喝采を浴びせている様子がとてもよくわかります。」と述べた。 佐藤卓己は「他者否定のラベリングとして『反知性主義』は最近の論壇で乱用されている。だが、その定義の曖昧さはすでにR・ホーフスタッター『アメリカの反知性主義』においても確認できる。重要なことは反知性主義が知識人を含む敵対する諸勢力、諸階層の中に偏在していることである。」と述べた。 岩田温は、日本における自称「リベラル」を批判し、「現実を見つめず、自分たちにとって都合のいい虚構と妄想の世界で生きているかのようにふるまう「反知性主義者」、それが日本の『リベラル』の本性なのだ。そして、こうした『反知性主義』は、本来リベラリズムとは無関係なのである。」と述べた。 開沼博は「国内においては、少なからぬ『有識者』が安倍政権批判の目的のために誤用・濫用したためその意味が十分に伝わらぬままに消費されてしまった感があるが、本来の意味はただ『知性がない、バカだ』と誰かを罵倒するための概念ではない。」と述べた。 森本あんりは、反知性主義の成り立ちは元をたどると、教会権力と政治権力という二つの異なる権力体系によって権力の中心が二つある楕円の権力構造ができたこと、つまり別の価値観が横に並び立ち批判することが反知性主義であるため、下から上にある知性をひっくり返して自分が上になってやるというものは、反知性主義ではなくルサンチマンであると指摘している。
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