新車輸送用車運車の登場
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/03/13 08:57 UTC 版)
その後、1960年代に自動車メーカーからの新車輸送用として、無蓋タイプの車運車が再び新製された。前述の通り車運車の形式区分は存在したものの、新製当初は有蓋タイプのみを対象としていたため大物車(記号「シ」)に分類された。その後、1965年の称号規定改正で無蓋タイプの車運車の形式区分として「ク」を割り当て、従前の車運車も一斉に称号改正を行った。 なお最初のうちは、新車の貨車への積み下ろしは様々な方法が試みられた。一台ずつパレットに搭載・固定した後に、クレーンでパレットを積み下ろしする方式(シム1000形)、直接貨車に乗り入れて、全長の長い車はターンテーブルで水平方向に転回する方式(シム2000形)、直接貨車に乗り入れて上部へはターンテーブルとエレベーターで積み下ろしを行う方式(シム3000形)、キャリアカーの様に上段が上昇・降下して積み下ろしをする方式(ク300形)などである。しかし、どの方式にしても積み下ろしに手間がかかる上に、駅側で設備が必要になったり貨車の機構が複雑になったりという欠点があった。このため、1966年(昭和41年)に車運車の標準形式としてク5000形が登場、積み下ろしを行う駅に積み下ろし用のスロープ設備を常備して、自走で積み下ろしをする方式が採用された。 車運車が登場した頃は道路状況も悪く、鉄道輸送による需要があったものの、昭和40年代後半からの国鉄の相次ぐストライキによる信頼性の低下や貨物運賃の値上げの影響を受けて自動車メーカーが鉄道輸送から離れ、自動車専用船やキャリアカーを利用した輸送へ転移していった。1985年(昭和60年)3月で一旦ク5000形による自動車の鉄道輸送は全面的に打ち切られたが、1986年(昭和61年)5月から部分的に再開された。しかし最終的に1996年(平成8年)3月に車運車を利用した自動車の鉄道輸送は全廃された。 自動車はその大きさに比べて重量が小さく、重量を基本として運賃を定める国鉄の貨物運賃制度では掛かる経費に比べて収益が少なくなってしまうという問題があり、車運車については当初荷重を実荷重とは別に運賃計算用に適宜定めていた。このため、初期の車両は車体に表記されている荷重は実荷重よりかなり重いものとなっている。1966年(昭和41年)に「高圧タンク車等に積載された貨物の運賃計算トン数の特定」という国鉄公示が出され、車体表記とは無関係に運賃計算トン数が定められることになった。ク5000形の場合、実際の荷重は10トン程度であるが、運賃計算トン数は26トンである。
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