数学的構成
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/08/18 04:35 UTC 版)
特殊相対性理論において、光円錐(もしくはヌル円錐 英: null cone)はミンコフスキー時空上において閃光が時間発展する面を記述する。これを三次元空間上に可視化するためには、二つの水平軸を二つの空間次元に、一つの縦軸を時間にわりあてればよい。 光円錐は次のように構成できる。事象 p を時刻 t0 における閃光(光パルス)とすると、この p から発したパルスが到達できる全ての事象は p の未来光円錐を形成し、逆に p に光パルスを送ることのできる全ての事象がp の過去光円錐を形成する。 ある事象 E について、時空上の全ての事象は次の5つのカテゴリーに分けることができる。 E の未来光円錐上にある事象 E の過去光円錐上にある事象 E の未来光円錐の内側にあり、E から発した物質粒子から影響を受け得る事象 E の過去光円錐の内側にあり、そこから発した物質粒子が E で何が起こるかに影響を与え得る事象 これ以外の全ての事象は E の(絶対) 他所 (elsewhere)[訳語疑問点] にあり、E の影響を受けることも E に影響を与えることも不可能である。 上の分類はどのような基準系を用いても変わらない。つまり、ある観測者がある事象を光円錐の内側にあると判断したならば、他の全ての観測者から見ても、基準系に関わらず同じ光円錐の内側にあるということである。これがこの概念の強力さの理由である。 ここまでは特定の位置と特定の時刻に起こる事象について述べてきた。ある事象がもう一つの事象に影響を及ぼすことができないということは、光がある位置から別の位置に「与えられた時間内に」到達することができないということである。それらの事象から発する光は究極的には別の事象の「以前の」位置には到達するが、それがその事象が起こってしまった「後」になるということである。 時間が進むにつれ、ある事象の未来光円錐はより多くの位置を囲むことになる(言い換えれば、4次元時空上の光円錐のある時刻における断面である3次元空間上の球面は、時刻が後になるにつれて大きくなる)。同様に、ある事象から時間を遡ることを考えると、その事象の過去光円錐は未来光円錐と同じように時間が遡るにつれてより多くの事象を囲むことになる。より遠い位置は当然より時間が経ってからになる。今日の地球で起こる事象の過去光円錐を例にとれば、一万光年離れた星は一万年以上遡らなければ光円錐の中に含まれない。 今日の地球で起こるある事象の過去光円錐は、その端の方では非常に遠い物体をも(可観測宇宙に存在する全てをも)含むことになるが、非常に昔、宇宙が若かったころの姿を見ることになる。 異る場所で(ある基準系で)同じ時刻に起こる二つの事象は常に相手の過去光円錐にも未来光円錐にも含まれない。光は瞬時に伝わることはできないからである。もちろん、他の観測者にはこれら二つの事象が別の時刻、別の場所で起こるように見えるだろうが、どちらにせよどちらの光円錐にも入らないことは同じなのである。 真空中の光速を1とするような単位系を使えば、例えば距離の単位を光秒とし時間の単位を秒とすれば、光は1秒のうちに真空中を1光秒だけ進むので、光円錐の傾きは 45° となる。特殊相対性理論においては光速は全ての慣性系において不変であるから、全ての観測者の光円錐は同じく 45° の傾きを持つ。ローレンツ変換の性質を表すには一般的にミンコフスキーダイアグラム(英語版)が用いられる。ある事象の光円錐の外側の、一繋がりの部分を他所 (elsewhere)[訳語疑問点] と呼ぶ。互いに他所の関係にある事象は相互に観測不可能であり、因果律的に繋がることはできない。 (45° という数字は空間的な意味しか持たない。実際の時空の性質を理解するために空間に引き落して図を書いているためである。空間的な傾きは角度で測られ、三角関数で計算される。これに対して、時空的な傾きはラピディティによって測られ、双曲線関数により計算される。)
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