改修案の見送り
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/12 08:24 UTC 版)
「国立競技場の建て替え」の記事における「改修案の見送り」の解説
JSCは当初、改修による旧国立の使用継続を検討していた。2008年の耐震診断結果を踏まえ、2010年に久米設計に改修計画の立案を発注し、2011年3月に「国立霞ヶ丘陸上競技場耐震改修基本計画」が完成した。内容や規模が異なる計3案のうち、最も費用がかかる収容人数7万人規模への大規模改修案では、改修費は777億円(消費税は含まず)と見込まれた。 しかし、以下のような理由が懸念され、改修でなく建替となった。 外観・コスト面 - 1964年の東京五輪開催前に増席拡張した、北東側のバックスタンドの一部が道路の上に突出しており、東京都から既存不適格の指導を受けていた。8万人規模の実現には、これを減席した上で西側・南側スタンドの大幅な増席が必要だが、その結果大きく歪んだ形になると、JSCは主張した。耐震改修のみを想定したバックスタンド自体も、共用期間が約30年と新築の半分程度で、再整備が生じることも、長期的なコストが割高とされた。さらに、近隣の聖徳記念絵画館への日影規制も不適合となっていた。 内部の狭さ・耐震補強 - 鉄筋コンクリート(RC)柱へのコンクリート増し打ちや、柱間への耐震ブレース増設などの補強工事では、ほとんどの柱が太くなる(JSCによると約3倍)。これにより、競技トラック付近や控室が狭くなったり、練習走路の入口にブレースが現れて動線が損なわれるなど、パラリンピックの運営も含めた問題が、JSCから指摘された。改修案では地下に一定の空間を確保したものの、奥行きの不足感が否めなかった。旧国立では、飲み物などは回廊の壁に在庫を積み上げ、ゴミは収集のタイミングを工夫して仮置きを無くすなど、「バックヤード空間」も不足していた。また、JSCは陸上トラックを9レーンへ改修できない点も言及したという。大和一光(旧国立の元・場長)は2013年11月、「老朽化」以外にも「ホスピタリティ」「天井の低さ」「メディアセンターがない」などを、新築せざるを得ないと考える理由に挙げた。 2011年2月には、超党派議員連盟の「ラグビーワールドカップ2019日本大会成功連盟」が総会で、8万人規模で再整備すべきと決議した。同年6月にはスポーツ基本法が国会で制定され、翌2012年に策定されたスポーツ基本計画では、JSCは「国立霞ヶ丘競技場等の施設の整備・充実等を行い、オリンピック・ワールドカップ等大規模な国際競技大会の招致・開催に対し支援する」 と定められた。JSCは、「相当にアクロバティックな手法を使わない限り、8万人規模を改修するのは不可能」と判断し、改修案を断念して、全面的な建替を決定した。
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