撤去問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/15 08:18 UTC 版)
先述の通り、2013年3月、2018年に予定されている改修工事にともない再現人形を2016年度までに撤去する計画が発表された。しかし、この撤去計画に対しては、「多くの市民が、人形を撤去する理由は、怖すぎるからだと思っている」「人形は原爆の恐ろしさを後世の人々に理解させるために必要」などといった内容の反対意見が一般市民から多数寄せられているほか、Facebookなどで市民団体による撤去反対運動が展開されている。一方、この撤去計画に対する賛成意見は、計画の発表から2ヶ月間に電話や電子メールで広島市当局や資料館に寄せられた200件を超える意見のうち、わずか1~2件だったという。 この問題について、Yahoo!Japanが2013年6月6日から6月16日にかけて「原爆資料館の『被爆人形』はどうすべき?」という題で意識調査を行ったところ、投票総数2万7640票の内訳は「現在の形で展示を続ける……1万6947票(61.3%)」「形を変えて展示を続ける……6359票(23%)」「撤去する……2847票(10.3%)」「わからない……1487票(5.4%)」という結果であった。 再現人形の撤去の理由について広島市は、人形は非常に印象に残り、当時の惨状を伝える展示であるとの意見があるものの、被爆者からは「原爆被害の凄惨な情景はこんなものではなかった。もっと悲惨だった」という声もあり、人形を見る人によっては原爆被害の実態を実際よりも軽く受け止められかねないとした。その上で、来館者に被爆の実相と二度と繰り返してはならないという思いを心に刻んでもらうためにも、誰が観覧しても個々人の主観や価値観に左右されない実物資料の展示が重要ということで、リニューアルに合わせて人形を撤去するとした。具体的な新しい展示方法としては ・被爆の実相を紹介する最初のコーナーで、一瞬にして壊滅した都市の中で多くの生命が失われたことを示すため、破壊されたレンガ壁など大型の被爆資料と亡くなった人たちが着用していた衣服、遺体や火傷を負った人たちを撮影した写真などを合わせ、当時の凄惨な状況がイメージできる展示を行う。 ・他のコーナーでは、遺品や被爆資料、惨状を描いた被爆者の絵などと合わせて、亡くなられた方の遺影や被爆の状況、寄贈者の思いなども合わせて展示することにより、一人ひとりの命の存在や遺族の悲しみなどを伝える展示を行う。 ・放射線による健康被害や家族を失った悲しみ、苦しみという心の傷など今日まで続く原爆被害の実態を展示する。 など原爆被害の全容を示し、これまで以上に原爆の非人道性や原爆被害の悲惨さ、被爆者の苦しみ・悲しみ等が伝わる展示となるよう検討を重ねる。 としている。一方で、市民から「人形を撤去する理由は、見た目が怖すぎるからだ」と批判が寄せられていることに対して、広島市は「凄惨な被爆の惨状を伝える資料については基本的にありのままで見ていただくべきという方針の下、この度被爆再現人形を撤去することとしたものであり、見た目が恐ろしい、怖いなどの残虐な印象を与えることなどを懸念して撤去するものではありません」「リニューアル後は、被爆者の遺品や写真、データ資料などを重視する方針で、残虐な印象を与えるから被爆人形を撤去するわけではありません」と、否定している。
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