振売の売り物
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/01 14:33 UTC 版)
図2、箱詰めのすしを売る振売。「守貞漫稿」より 前述の『守貞謾稿』では、油揚げ、鮮魚・干し魚、貝の剥き身、豆腐、醤油、七味唐辛子、すし(図2)、甘酒、松茸、ぜんざい、汁粉、白玉団子、納豆、海苔、ゆで卵など食品を扱う数十種類の振売商売を紹介している。中でも「冷水売り」は“夏日、清冷の泉を汲み、白糖と寒ざらし粉の団子を加え一椀四文で売る、求めに応じて八文、十二文で売るときは糖を多く加える也、売り詞(ことば)「ひゃっこいーひゃっこい」。一椀たいがい六文、粉玉を用いず白糖のみを加え、冷や水売りと言わず砂糖水売りと言う”と紹介されている。京阪ではこれに似たものを道ばたで売っている。 中には悪徳な商売をする振売もいた。『守貞謾稿』で「妖売」とあるのがそれで、“これは種々の贋物を欺き売るを業とする者也”とあり、“鶏、雁などの肉を去り、豆腐殻などを肉として売る。この類、そのほか種々の謀計を旨とする也”と書かれている。 『守貞謾稿』には食品以外にもほうき、花、風鈴、銅の器、もぐさ、暦、筆墨、樽、桶、焚付け用の木くず、笊、蚊帳、草履、蓑笠、植木、小太鼓、シャボン玉など日用品や子供のおもちゃ、果ては金魚、鈴虫・松虫などの鳴き声の良い昆虫、錦鯉など愛玩動物を商う振売も紹介されており、その中には現代も残っている「さおだけ売り」や、相撲の勝負の結果を早刷りにして売る「勝負付売り」も紹介されている。 江戸幕府は、庶民の暮らしが豪華になるとそれを「身分不相応」として取り締まることが多くあり、1つ六十文もするような高級なすしを作る職人を捕らえたとある。 図2のすし売りの項抜粋“江戸では近年京阪のように箱ずしは廃れて、握りずしのみ。握り飯の上に卵焼き、アワビ、マグロの刺身、海老のそぼろ、小鯛、コハダ、白魚、タコなどが普通。そのほか様々を作る。みな各一種を握り飯の上に置く。巻きずしをのり巻きといい、カンピョウだけを入れる。新生姜も古生姜も酢に漬けず、弱蓼と二種を添える。また、毛抜きずしと言うのは握りずしを一つずつ熊笹に巻いて押してあり、一つで六文ぐらい。他に毛抜きずしを高く売るものが多く、一つで四文から五、六十文ぐらいまでした。天保の時、高いすしを売る者二百人余り捕らえて手鎖の刑にした。その後は四文八文だったが、近年命令がゆるんで、二〜三十文のすしを作る者がいる”
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