グリーグ:抒情小品集 第10集
英語表記/番号 | 出版情報 | |
---|---|---|
グリーグ:抒情小品集 第10集 | Lyriske smastykker No.10 Op.71 | 作曲年: 1901年 出版年: 1901年 初版出版地/出版社: Peters |
楽章・曲名 | 演奏時間 | 譜例 | |
---|---|---|---|
1 | その昔 "Der var engang" | 4分30秒 | |
2 | 夏の夕べ "Sommeraften" | 3分00秒 | |
3 | 小妖精 "Smatrold" | 2分00秒 | |
4 | 森の静けさ "Skovstilhed" | 5分30秒 | |
5 | ハリング "Halling" | 3分00秒 | |
6 | 過去 "Forbi" | 3分00秒 | |
7 | 想い出 "Efterklang" | 3分00秒 |
作品解説
1867年、《ピアノ協奏曲イ短調 作品16》で一躍有名になったグリーグは、この年から1901年にかけてこの作品集を書き上げた。生涯にわたって作曲されているため、グリーグの作風、ピアニズム、その変遷すべてがその中にあらわれており、グリーグの作品の中でも中心的な存在にある。
いずれも1分~6分程度のかるめの小品であり、ステージ用というよりは、主にサロンや家庭で広く親しまれていた。いずれの曲も、標題がつけられており、それぞれの曲に対して、一つの感情、気分、情景が表現されている。
1867年、第1集を発表したが、その後ピアノ、作曲、指揮など多忙だったこともあり、第2集が発表されたのは、その16年後であった。第2集から第10集は間隔をおきながら続けて作曲された。全10巻で、計66曲の作品がおさめられている。
グリーグ : 抒情小品集 第10集 / Lyriske smastykker No.10 op.71
〈夏の夕べ〉と〈小妖精〉の2曲を除き、1901年、およそ一ヶ月弱の期間で一気に作曲された。当時グリーグは58歳であった。最後の曲集になったこの7曲は、効果的に配置がなされており、全曲通して演奏してもそれらの変化を楽しむことができる。
1.その昔 / op.71-1 "Der var engang":第一部では、懐かしさを感じさせるようなスウェーデンの民謡が、中間部には、ノルウェーの飛び跳ね舞曲が用いられている。また、中間部では、高音で光輝くような旋律がきかれ、これがバスと見事な掛け合いをみせる。演奏においては、テンポの変化や、強弱による陰影を効果的に表現したい。
2.夏の夕べ / op.71-2 "Sommeraften":北欧の夏の夕べを描きだしたような静かな曲。最初は淡く彩られた音が、徐々に光を帯びはじめ、fの部分で非常に美しい輝きをみせる。
3.小妖精 / op.71-3 "Smatrold":全曲とは対照的な性格をもつ。スタッカートで刻まれる伴奏にのせて、非常に軽快でおどけたような旋律が神出鬼没に動きまわる。かなりのスピードで奏されるので、技巧的な習得のためにも丹念な練習が必要であろう。
4.森の静けさ / op.71-4 "Skovstilhed":冒頭の2つの和音が光と影のようなコントラストを生み出している。その後絶え間なく奏される8分音符の伴奏にのせて、穏やかな旋律が優しく歌われていく。ストレットでfまで高まり、やや静まった後、冒頭の2つの和音が再現される。この2音が生み出す静寂な雰囲気にはハッとさせられるものがある。再び旋律が穏やかに奏されるが、それはすぐにとぎれ、ストレットとトランクィロの部分が迷うように繰り返される。しかし、最後はトランクィロへ。安らぎを得て、最後はpppで消えるように曲を閉じる。
5.ハリング / op.71-5 "Halling":グリーグのハリングの中でも技巧的な作品。特にff、fffの部分では、ピアノをしっかりと響かせた豊かな音色が求められる。まずはゆっくりと、楽器をならす練習をするとよいだろう。アクセントが不規則につけられているが、これをによって、曲に独特のスウィング感が与えられている。
6.過去 / op.71-6 "Forbi":「亡き人の記念に」という副題がついており、「悲しげに」奏する。この曲は、他の作品に比べて出来が悪いとする者もいれば、最も興味深い作品だとする者もおり、評価が分かれている。和声的にも特徴的な曲である。オルガンのために書かれた作品である可能性もあり、音を持続させて、レガートで奏するのが非常に難しい。
7.想い出 / op.71-7 "Efterklang":第一集の第一曲〈アリエッタ〉を引用し、ワルツ風に編曲しており、曲集全体をしめくくるグリーグの意思が感じられる。全体を通して音量はおさえられており、内省的な雰囲気が強められている。一つ一つの音を大切に、慈しむように。
- 抒情小品集 第10集のページへのリンク