グリーグ:抒情小品集 第3集
英語表記/番号 | 出版情報 | |
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グリーグ:抒情小品集 第3集 | Lyriske smastykker No.3 Op.43 | 作曲年: 1886年 出版年: 1886年 初版出版地/出版社: Peters |
楽章・曲名 | 演奏時間 | 譜例 | |
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1 | 蝶々 "Sommerfugl" | 2分00秒 | |
2 | 孤独なさすらい人 "Ensom vandrer" | 2分30秒 | |
3 | 故郷にて "I hjemmet" | 2分00秒 | |
4 | 小鳥 "Liden fugl" | 2分00秒 | |
5 | 愛の歌 "Erotik" | 2分30秒 | |
6 | 春に寄す "Til foraret" | 3分00秒 |
作品解説
1867年、《ピアノ協奏曲イ短調 作品16》で一躍有名になったグリーグは、この年から1901年にかけてこの作品集を書き上げた。生涯にわたって作曲されているため、グリーグの作風、ピアニズム、その変遷すべてがその中にあらわれており、グリーグの作品の中でも中心的な存在にある。
いずれも1分~6分程度のかるめの小品であり、ステージ用というよりは、主にサロンや家庭で広く親しまれていた。いずれの曲も、標題がつけられており、それぞれの曲に対して、一つの感情、気分、情景が表現されている。
1867年、第1集を発表したが、その後ピアノ、作曲、指揮など多忙だったこともあり、第2集が発表されたのは、その16年後であった。第2集から第10集はある一定の間隔をおきながら続けて作曲された。全10巻で、計66曲の作品がおさめられている。
グリーグ : 抒情小品集 第3集 / Lyriske smastykker No.3 op.43
1、2集と比較すると、この第3集の内容は自然を主題にしているという点で統一性がみられ、各曲の質が高い。グリーグの最高傑作の一つであるといえる。1877年に出版された。
1.蝶々 / op.43-1 "Sommerfugl":グリーグの作品の中でもとりあげられることが多い名曲。粒の揃った音でキラキラと奏され、かけあがったり、舞い降りたりするその柔軟な音の動きはまさに、美しい蝶を想起させる。主要な旋律ははっきりと浮き立たせる必要がある。
2.孤独なさすらい人 / op.43-2 "Ensom vandrer":1番と同様に、グリーグの作品の中でもとりあげられることが多い名曲の一つ。もの悲しく流麗な旋律を持続音が支えており、美しい響きを増している。
3.故郷にて / op.43-3 "I hjemmet":グリーグの故郷に捧げられた。やさしく、穏やかに歌われる旋律は非常に美しく、感傷的な気分をかきたてる。光り輝くような高音から、優しくつつみこむように低音で響く和音まで、魅力に富んだ一曲。
4.小鳥 / op.43-4 "Liden fugl":冒頭から鳥の鳴き声を思わせるトリルが印象的に響く。これを効果的にきかせるためには、粒をそろえて明瞭な音をつくる必要がある。繊細なテクニックを要する曲。
5.愛の歌 / op.43-5 "Erotik":非常に愛情と幸福感に満ちた音楽である。それこそ愛撫するようなレガートで旋律を奏で、包み込むようなあたたかい和音で響きをつくっていきたい。
6.春に寄す / op.43-6 "Til foraret":グリーグの作品の中で最もよく知られる名曲の一つ。グリーグがデンマークへ旅行した際、ホームシックになり、この曲を作曲した。「厳しく野性的な美しさがあふれる、ノルウェーの自然が恋しくて仕方なく、それを讃える歌をつくってしまった。とくに目新しい作品ではないが、私の心からの率直な気持ちを託した。」と、彼は、友人フランツ・バイエルへ宛てた手紙の中で記している。
ppの中に秘められた情熱が、春の息吹とともにたちあらわしてくるように感じられる。まさに、ノルウェーの美しい抒情が描きだされているといえるだろう。伴奏の和音は、バランスよく、粒をそろえて奏する。また、リタルダンドなどの速度記号には注意を払いつつも、音楽の流れが不自然にならないよう注意したい。
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