グリーグ:抒情小品集 第9集
英語表記/番号 | 出版情報 | |
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グリーグ:抒情小品集 第9集 | Lyriske smastykker No.9 Op.68 | 作曲年: 1898年 出版年: 1899年 初版出版地/出版社: Peters |
楽章・曲名 | 演奏時間 | 譜例 | |
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1 | 水夫の歌 "Matrosernes opsang" | 1分30秒 | |
2 | おばあさんのメヌエット "Bedstemors menuet" | 2分30秒 | |
3 | あなたのそばに "For dine fodder" | 3分00秒 | |
4 | 山の夕べ "Aften pa hojifjeldet" | 3分30秒 | |
5 | ゆりかごの歌(子供の歌) "Barnlat" | 2分00秒 | |
6 | 憂鬱なワルツ "Valse melancolique" | 6分00秒 |
作品解説
1867年、《ピアノ協奏曲イ短調 作品16》で一躍有名になったグリーグは、この年から1901年にかけてこの作品集を書き上げた。生涯にわたって作曲されているため、グリーグの作風、ピアニズム、その変遷すべてがその中にあらわれており、グリーグの作品の中でも中心的な存在にある。
いずれも1分~6分程度のかるめの小品であり、ステージ用というよりは、主にサロンや家庭で広く親しまれていた。いずれの曲も、標題がつけられており、それぞれの曲に対して、一つの感情、気分、情景が表現されている。
1867年、第1集を発表したが、その後ピアノ、作曲、指揮など多忙だったこともあり、第2集が発表されたのは、その16年後であった。第2集から第10集は間隔をおきながら続けて作曲された。全10巻で、計66曲の作品がおさめられている。
グリーグ : 抒情小品集 第9集 / Lyriske smastykker No.9 op.68
1899年に出版された。〈山の夕べ〉と〈ゆりかごの歌〉は、オーケストラ版への編曲がなされ、1900年に出版されている。
1.水夫の歌 / op.68-1 "Matrosernes opsang":たくましく、豊かな和音の響きに支えられながら、旋律が爽快なスピードで歌われていく。縦の音を確実に揃え、豊かな響きをだすためにも腕の重みを生かすとよいだろう。
2.おばあさんのメヌエット / op.68-2 "Bedstemors menuet":アレグレット・グラジオーソ・エ・レジェリッシモ。非常に軽やかで上品な、おばあさんのメヌエット。小音符を伴ったおどけたようなリズムが、愛らしい。全体的にppで奏され、繊細な雰囲気が維持されている。
3.あなたのそばに / op.68-3 "For dine fodder":微妙なハーモニーが特徴的な曲。基本的に、感情を前面に押し出すのではなく、内的な表現を心がけたい。中間部では左手のソロと、ソプラノのデュエットがきかれる。転調を意識して、感情の高まりを表現したい。また、全体的には脱力した手の重みを生かして、非常に柔らかく暖かな音色で。
4.山の夕べ / op.68-4 "Aften pa hojifjeldet":曲集中、最も重要な傑作のひとつ。この曲は、1898年には、〈牛を呼ぶ声〉というタイトルをもっていた。また、この作品について、グリーグは「夕方のウトラダール、ヨトゥンハイムの牧場の夕べの雰囲気を想像してみてください」とも述べている。音がかなり長く引き伸ばされているが、その響きが消えたとしても、頭の中では音を鳴らし続けなければならない。自然の風景を眺めているかのように、旋律が描写的な動きをみせる。それと対照的にドラマティックなコーダが曲をひきしめている。
5.ゆりかごの歌(子供の歌) / op.68-5 "Barnlat":ノルウェー民謡を編曲したもの。非常に愛情深い旋律が優しく歌われていく。基本的に4声でかかれているが、どの声部も動きがわかるように、バランスのよい音量で奏されたい。中間部ではグリーグらしい高音のきらめきを聞くことができ、また、大胆な転調が劇的な効果をあげている。
6.憂鬱なワルツ / op.68-6 "Valse melancolique":ワルツのリズムにのせて、不安げな旋律が歌われていく。同じ形が何度も反復され、変化に欠けるわりには長大で、演奏が単調になりがちである。曲にストーリーを与え、自分なりの表現を求めるとよいかもしれない。
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