戸外制作
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戸外制作(こがいせいさく)とは、絵画を戸外で描くという意味であり、日本では美術書などでフランス印象派などの絵画スタイルを説明するときに使用される表現である [1][2]。フランス語では、オンプレネール (en plein air) またはプレネール (plein air) である[3]。 en plein air (英語:in the open air) を直訳すれば「戸外で」または「野外で」、「屋外で」という意味だが、このフランス語は他言語圏を含めた美術界では、絵画を戸外で制作するという意味に使われる。ただし、フランスではスポーツなど他の屋外活動にも使うので、曖昧さをさけるため戸外制作をpeinture sur le motif (英語の painting on the ground に当たる)と表現することもある。
- ^ ウィリアム・ザイツ 著、辻邦生/井口濃 訳 『モネ』(初)美術出版社、1991年、12頁。ISBN 4-568-19011-8。
- ^ “「ノルマンディー印象派フェスティバル」をより楽しむために”. MMM メゾン・デ・ミュゼ・デュ・モンド. 2014年10月20日閲覧。
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- ^ a b “Liron Sissman's Page - PLEIN AIR ARTISTS”. 2014年10月23日閲覧。
- ^ 「美術検定」実行委員会 2008, p. 68.
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- ^ 視覚デザイン研究所 『西洋美術史入門』視覚デザイン研究所。ISBN 978-4-88108-190-7。
- ^ 島田紀夫 2004, p. 162.
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- ^ “Newlyn School, Landscape Painting Artist Colony, Cornwall: History, Artists, Stanhope Forbes, Frank Bramley”. Visual-arts-cork.com. 2014年10月20日閲覧。
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- ^ “Artists who work 'en plein air' share their motivations: Arts”. adn.com (2010年6月6日). 2010年8月8日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。2014年10月20日閲覧。
- ^ “Plein Air Painting - Painting Outside Plein Air”. Painting.about.com (2010年8月16日). 2014年10月20日閲覧。
- ^ “久米美術館【桂一郎コーナー】”. 2014年3月11日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。2014年10月23日閲覧。
戸外制作
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モネに代表される印象派は、こうした反アカデミズムの流れの中で登場してきた。モネは、クールベの写実主義的態度を受け継ぎ、自然に対する観察に向かった。もっとも、クールベにとって森や川といった自然が客観的に存在するものであったのに対し、モネたち印象派の画家にとっては、自然は自己の感覚に反映されたものであり、彼らはその「印象」、つまり主観的な感覚世界をキャンバスに再現することを追求した。 モネが自然の印象を正確にとらえるためにとった制作手法が戸外制作であった。モネはこの手法を先輩ウジェーヌ・ブーダンから学んだ。モネは、画家として目覚めた日のことを次のように回想している。 ブーダンは画架を立て、制作にとりかかった。私は、それを見るともなく見ていたが、やがて注意を引きつけられた。そして突然、ヴェールが引き裂かれたのだ。私は理解した。絵画に、どれほどのことがなし得るかということを理解したのだ。確固たる独立心をもって自身の芸術に献身するこの画家の、制作風景をたった一度見ただけで、私は画家となるべく運命づけられたのである。 こうした戸外制作を可能にしたのが、1840年代にイギリスで発明された、ネジ式の蓋を持つ金属製チューブ入り絵具であった。1820年代までは、画家がアトリエで自ら絵具を調合するか、豚の膀胱で作った袋で業者から購入しなければならず、保存性が悪かった。1820年代に注射筒状の容器が発明されたが、洗浄が大変であった。そのため油彩画はアトリエで仕上げるのが当然であった。チューブ入り絵具の発明により、戸外にイーゼルを立て油彩画を仕上げることができるようになり、バルビゾン派がいち早くこれを実践していた。しかし、当時一般的な手法とはなっておらず、クールベも、『画家のアトリエ』の中で、アトリエで風景画を制作する様子を描いている。 戸外制作は、物の描き方に革命をもたらした。古典的な絵画は、明から暗へゆっくり移行する陰影を付けて物の丸みと立体感を出す肉付法をとっていたが、それは、アトリエの窓から差し込む光が物に当たってできる、なだらかな陰を前提としたものであった。しかし、戸外の太陽の光の下では、強烈な明暗のコントラストが生じ、明から暗へのなだらかな移行は見られず、物が平板に見えるし、陰の部分も、単なる黒や灰色ではなく、周りの物から光が反射して、色彩が感じられる。このことに気付いたのは、マネと、モネたち印象派の画家たちであった。彼らは、物にはそれぞれ固有色があるという約束事から自らを解放し、目に映る色彩を自由に描くようになった。 モネは、戸外制作を本格的に始めたのは自分だという自負を持っており、1900年に次のように述べている。 私は戸外制作を始め、没頭するようになった。当時、戸外制作を存分に試みた画家はまだ誰もいなかった。そのマネですら、試みてはいない。マネが戸外制作を行うようになったのは、後のことで、私のほうが先だった。 もっとも、特に後期の連作では、屋外でのスケッチにアトリエで手を加えている。晩年の「睡蓮」大装飾画では、池で描いた大型の習作を基に、アトリエで想像力による再構成を行っている。
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