戦前の「公民科」
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/05 10:10 UTC 版)
日本において、公民教育が開始されたのは、1890年に実業補習学校において、職業教育に付随して「公民トシテ心得ヘキ事項」として公民教育が組み入れられたのが最古である。ただし、その本格化は社会教育の重要性の高まりと普通選挙の導入が決まった大正時代末期のことである。 1931年から1947年にかけて中学校に設置された教科の1つに「公民科」がある。社会の発展に参加する構成員として必要とされる知識や素質などを養うための教育、すなわち「公民教育」を扱う学科である。 1931年にそれまでの「法制経済」に代わって「憲政自治ノ本義ヲ明ニシ日常生活ニ適切ナル法制上経済上並ニ社会上ノ事項」を教育することを目的として開始された。ところが、軍国主義の台頭と天皇機関説問題をきっかけとして1937年に改訂が実施されて、「我ガ国体及国憲ノ本義特ニ肇国ノ精神及憲法発布ノ由来ヲ知ラシメテ以テ我ガ国統治ノ根本観念ノ他国ト異ル所以」を明らかにすることを教育目標に掲げることとなった。これは欧米の近代的市民育成の方針とは異なる絶対主義思想に基づいた帝国臣民育成理念を前面に出したものとなった。 第二次世界大戦敗戦後、欧米型の民主主義導入に伴って近代的市民育成が求められることとなった。そこで1945年10月に公民教育刷新委員会が結成されて、公民教育改革について論議されたが、1947年の学校教育法施行に伴って社会科に統合されて廃止された。 その後、旧公民科分野は「政治・社会・経済的分野」と呼ばれていたが、1969年に「公民的分野」と改称されて、公民の名称が復活する。その後、1977年及び翌年の学習指導要領改訂に伴って、「公民的資質」の育成という小学校から高等学校にかけての統一方針が掲げられることになるが、その際に「基本的人権の自覚」という従来あった項目が削除されたことが問題となった。
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