恐ろしき錯誤
作者江戸川乱歩
収載図書D坂の殺人事件 〔新装版〕
出版社春陽堂書店
刊行年月1987.6
シリーズ名江戸川乱歩文庫
収載図書屋根裏の散歩者・人間豹
出版社角川書店
刊行年月1987.8
シリーズ名角川文庫
収載図書二銭銅貨
出版社講談社
刊行年月1987.9
シリーズ名江戸川乱歩推理文庫
収載図書心理試験 〔復刻版〕
出版社春陽堂書店
刊行年月1993.11
シリーズ名創作探偵小説集
収載図書悪夢十夜
出版社角川書店
刊行年月1993.12
シリーズ名角川ホラー文庫
収載図書屋根裏の散歩者 改訂版
出版社角川書店
刊行年月1994.4
シリーズ名角川ホラー文庫
収載図書江戸川乱歩全短篇 1 本格推理
出版社筑摩書房
刊行年月1998.5
シリーズ名ちくま文庫
恐ろしき錯誤
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/30 01:25 UTC 版)
『恐ろしき錯誤』(おそろしきさくご)は、江戸川乱歩の短編小説。
概要
『新青年』1923年11月号に掲載された。「二銭銅貨」「一枚の切符」が『新青年』編集長の森下雨村に好評だったため、気負って書いて投稿したものの、森下の評価は高くなく、関東大震災後の復活号にようやく掲載された。本作が一向に掲載されなかったことを乱歩は不満に思い、1923年は本作以外の小説を書かなかった。しかし、本作掲載後も、自分の能力が未熟として、乱歩は小説を書かなくなり、『新青年』編集部の懇請でようやく「二癈人」を書き、再び小説を書くようになった[1]。
あらすじ
北川と野本は学生時代からのライバルで互いに好意を抱いておらず、恋でもライバルであった。北川が下宿している家の娘、妙子には北川だけでなく、その友人たちも、そして野本も想いを寄せていたからである。そんな中、妙子の気持ちをつかんでいるのが野本なのは誰の目にも明白だった。しかし、野本が帰省した隙に、北川は妙子の家に対する自分の有利な家柄などを利用し、妙子と結婚してしまったのだった。
やがて子どもも生まれたが、ある日、北川の家が火事となる。北川は子どもを抱いて脱出し、妙子にも声をかけたが、妙子は何故か途中で燃えさかる家の中にとって返し、焼死する。
悲嘆にくれる北川に近所に住む友人の越野が、妙子が燃えさかる家に戻る前に彼女に話しかけた男がいた。その男は妙子目当てに北川の下宿に集まった仲間たちの誰かに似ていたと述べる。北川は、その男が妙子に、あなたの赤子は奥の座敷に寝ていると言って妙子を殺したのではないか、そしてそれは野本が自分への復讐のためにやったことではないかと考える。
北川はその復讐に対する復讐を考える。妙子が昔から皆の前でつけていたペンダントと同じものを二つ作り、そのそれぞれの中に、野本、井上、松村と学友の写真を貼って、それぞれその学友に渡し、妙子は夫である自分ではなくて、ずっと君に惚れていたのに、君は妙子を殺してしまったのだと告げるという方法である。本当に北川の思っていた方法で妙子を殺した犯人なら激しい苦悶に陥るはずだ。井上、松村はペンダントを渡すまでもなく無実であることがわかる。残る本命の野本に会ってそれを実行すると、野本は渡されたペンダントをあけないままに失神してしまい、北川は勝ったと狂喜する。
しかし翌日、北川は自分は違うペンダントを野本に渡したのではないかという思いにとらわれる。そこへ野本から、松村はそんなことをする男ではない、君は療養した方がいいとの丁寧な手紙が来る。北川は発狂する。
登場人物
- 北川(きたがわ)
- 本作の主人公。無愛想で、目標を達成するまでは1つのことに集中する思い込みの激しい性格。
- 野本(のもと)
- 北川のライバル。快活な美男子。妙子を北川に奪われたのちも独身を通している。
- 妙子(たえこ)
- 北川の妻。美人でしとやか。北川の友人たちの憧れの存在だった。
- 越野(こしの)
- 学生時代からの北川の友人。火事のときには北川家の避難の手伝いをした。
脚注
- ^ 概要の記述は光文社文庫『江戸川乱歩全集第1巻 屋根裏の散歩者』(2004年)の123〜124頁を参照にした。
収録
光文社文庫『江戸川乱歩全集第1巻 屋根裏の散歩者』(2004年)
外部リンク
恐ろしき錯誤
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「乱歩奇譚 Game of Laplace」の記事における「恐ろしき錯誤」の解説
アケチはナミコシが完成させた数式「暗黒星」を解くことが出来ず苦慮していた。ある行動がもたらす波紋をすべて解析する暗黒星を解くことが出来れば、これから起こる事件も事前に予測できるはずだった。アケチはコバヤシとハシバの協力を得て数式の解析に乗り出す。二十面相の崇拝者の間でアケチの存在がクローズアップされていることを知ったコバヤシは暗黒星の解析にはアケチの要素を加える必要があるのではないかと提案する。コバヤシの助言通り、アケチの要素を加えたところ、暗黒星は解析された。その直後、二十面相の後継者を名乗る人物から「1週間以内に事件を起こすので解決してみろ」という挑戦の電話がかかる。暗黒星解析に熱中するあまり学校に登校しなくなったコバヤシを心配して、ハシバはコバヤシに登校を促すが、コバヤシはハシバを認識出来なくなり始めていた。 数日後、脳外科の権威・ムナカタリュウイチロウの功績を称えるパーティーが開かれる。ムナカタのスピーチの最中に突然、ムナカタがかつて患者の手術に非管理の硬膜を使用し、患者を不治の病にして、自殺に追い込んだという旧悪を暴露する映像が流される。その患者こそ、検視官・ミナミの弟であり、ミナミは弟の復讐のために二十面相となったのだった。アケチはミナミの犯行を事前に予測し、ミナミが非管理の硬膜を仕込んだ料理を普通の料理にすり替えていた。だが、ミナミは「こうなることはわかっていた」と哄笑する。その直後、死亡したはずのナミコシが焼身自殺した場所で復活したことを写す映像が流され、驚愕したアケチはナミコシがかつて焼身自殺した場所へと向かう。アケチがナミコシの所に向かっている間に、ムナカタは落下したシャンデリアの下敷きとなって死亡した。 初代二十面相・ナミコシの復活の動画は瞬く間に日本全土に広がる。ミナミの狙いはナミコシの復活を演出することだった。
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