循環器症状
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/14 20:19 UTC 版)
大動脈壁は正常より柔らかく、もろい。あるいは弱く、伸びやすく、形がくずれて膨張する傾向があることが多い。また、進行する動脈拡張の出現や拡張の速度は極めて多様であり診察に注意が必要である。マルファン症候群の約90%の人々は心臓血管になんらかの異常がある。特に心臓から血液を他の体へ運ぶ大動脈の壁の三層部分が弱くなって、切れたり拡大する。そのため解離・破裂に注意する。大動脈の人工血管への待機置換術の手術による死亡率は低いが急性大動脈解離による緊急血行再建術の場合、術後の早期死亡率が高い。適切な手術時期の見極めが大事。 心臓の血管への負担を減らし、高血圧を防ぎ、負荷の軽い運動を選択する。降圧剤のベータ遮断薬(ベータ‐ブロッカー)は、大動脈瘤のような合併症の一部を制御するのに用いられる。ベータ受容体遮断薬に対するアレルギーがある患者は、ベラパミルのようなカルシウムブロッカーを与えられる可能性がある。 最近、降圧剤ロサルタンは、マルファン症候群を持つマウスで、大動脈瘤と肺の問題を予防することが発見された。 マルファン症候群患者の死因の多くは大動脈弁や僧帽弁の閉鎖不全による心不全、動脈破裂、急性大動脈解離などの心臓血管の疾患によるものである。なかでも大動脈解離による突然死の最も頻度が高い原因である。これらの致命的な疾患を治療として大動脈の拡張が進み破裂の危険がある場合、予防的措置から人工弁や人工血管に置換する場合がある。人工血管置換術は1985年より広く使われている。通常、術後は日常生活を普通に送ることが可能である。人工心臓弁で生じる血栓の可能性を最小化するために、弁を取り替えてもらった患者は、抗凝血性の薬物(通常ワーファリン)を服用しなければならない。 大動脈の拡張が臨界寸法45〜50ミリメートルに達するとき、急速に血管が拡張する場合、治療の選択として大動脈弁または人工血管の移植手術が通常考慮される。手術を受ける決め手は、大動脈の容積、大動脈の予想される通常の容積、大動脈解離の大動脈径の大きさ、年齢高、性と家族歴などに基づく。いずれの治療も熟練した心臓専門医によって慎重に評価される必要がある。 若年者で突然、激烈な胸痛や背部痛、強烈でなくても広範囲に広がる背部痛で発症する急性大動脈解離を起こすことがよく見られる。そのような場合、マルファン症候群の患者は解離でないとCT検査等により確認されるまで医師による厳重な管理下にあることが重要。一般的に急性の大動脈解離は中高年に多く若年で発症するマルファン症候群のことを認識していないときに神経性の胃痛などと判断され見逃されるので注意が必要。 弁置換手術による治療は一般的な手段である。手術療法としては、ベントール術等を行う。弁形成術では自己弁温存法(David-V)、生体弁、機械弁が用いられる。大動脈の血管置換では人工血管が用いられる。ステント術はマルファンの血管のもろさから将来的なこともふまえ適用されることは少ない。 まれなケースで、僧帽弁脱出は突然死を引き起こすことがある。 マルファン症候群に関連した心臓病が、必ずしも明らかな症状をもたらす可能性があるというわけでない。 比較的に三十代前後に心臓血管系の手術が行われることが多く早い回復が期待できる。手術を数回に分けたり再発もあり将来のことをふまえて計画的に行われることが望まれる。 致命的でないが、マルファン症候群の骨格や眼性の症状は深刻である場合がある。これらの症状は、通常適当な状態のために典型的方法で処置される。
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