宮本・毛会談後の日本共産党の反中国的な活動に対する批判
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「日中共産党の関係」の記事における「宮本・毛会談後の日本共産党の反中国的な活動に対する批判」の解説
宮本顕治は、「ベトナム侵略反対の国際統一戦線の結成を願って、ベトナム、中国、朝鮮の三カ国の共産党、労働党と会談するために、大型の代表団を」送ったが、統一戦線にソ連を含めることに中国側が反対し、中国共産党との共同声明を公開できず、これが両党の断絶につながったと書いている。しかし、当時の国際情勢と日本共産党の党内事情、あるいは会談後の日本共産党の動静などから考えると、代表団派遣の意図や動機には、建前とは異なるものが見えてくるとする批判がある。それによれば以下のとおりである。 1966年当時、北ベトナムへの軍事攻撃を強めるアメリカに対し、中国は「ベトナムへの侵略は中国への侵略につながる」と主張し、国を挙げてベトナムの「抗米・民族独立闘争」を支援していた。中国の態度から中国脅威論を持ったアメリカは、日本・韓国・台湾の連携を強めさせ、中国包囲網を強化しようとしていたところ、同時期に、中ソ対立が公然化し、両国共産党の論争や対立から、国家間の対立へと発展しつつあった。中国は、米ソ二つの超大国から攻撃を受けかねない情勢に追い込まれ、これを克服するために文化大革命を発動して、国内体制の再編・強化に取り組み始めていた。このような中国が重大な局面に立っていたときに、日中共産党の対立が生じ、日本共産党は中国との交流自体を断絶させることになった。前述のとおり、中ソ対立は国家対立にまで発展しつつあり、日本共産党の指導部は、延安時代の中ソ共産党の関係からの状況をよく知っていたはずであり、「ベトナム侵略反対」の国際統一戦線を、前述の形で提案すれば、ソ連の評価について日中共産党の対立が発生することは予測できたはずである。のちの日本共産党の行動を見ると、宮本らは、そのような対立が出た場合には、中国共産党との関係を断つ心づもりで、代表団を送ったのではないかと考えられる。当時、日本共産党は、国内問題で、それまで採用していた闘争を中心とする方針を転換しつつあり、中国共産党の強硬な路線には賛成できないという方針を固めつつあった。つまり、宮本顕治書記長が党内で主導権を確立するという目的があった可能性は否定できない。日本共産党では宮本書記長と意見が異なる従来の党員を排除する権力闘争が長く続いていた。そのような闘争を通じて、今日の日本共産党が形成されている。 宮本は、手記で、路線対立などにつき「歴史の検証」を待とうと書いているが、同じ共産党といっても、国によって事情が異なり、意見の対立があったことはやむを得ない。しかし、日本共産党は党間の対立を、日中友好運動の中に持ち込み、さまざまな友好団体に派遣していた党員のメンバーを通じて、中国との交流そのものを否定し、妨害する姿勢を強めた。日本共産党が日中友好協会を含む友好団体に多くの人員を提供していたのは、日本共産党が様々な団体の中に組織を作り、その組織を通じて団体に対する共産党の影響を及ぼそうという性格の活動をおこなっていたからである。 たとえば、1965年の日中青年友好大交流の成功に続き、1966年に予定されていた第二回日中青年友好大交流は、日本共産党が不参加方針をとっただけでなく、日本共産党の指示に従った団体が参加を阻止するための妨害行動を行い、佐藤内閣はこの内部対立に乗じて、旅券の発行を認めない方針を決定した。また、1966年11月から12月にかけて、日中双方の貿易関係諸団体の主催により、北九州市と名古屋市で中国経済貿易展覧会が開催されることになり、日本側では日中友好協会などの友好団体が準備をしていたが、日本共産党中央が同展に参加しない方針をとるとともに、関係団体に所属している党員を通じて、規模を大きくさせないとか、会場で『毛沢東選集』をはじめとする中国の書籍の展示や販売をさせないなどという妨害活動を行った。日中友好運動全般で徹底されたこのような日本共産党の行動は、「反中国」と形容され、運動に混乱をもたらした。日中友好の運動は、特定の党派の専有物ではなく、日本の各界各層の人たちによる大衆運動だったからである。党派の方針を日中国交回復という国民的な政治課題に優先させて、妨害行為を行った日本共産党の当時の姿勢を問題視する批判がある。
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