固有軌道要素による分類
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/22 08:59 UTC 版)
軌道長半径や離心率、軌道傾斜角など、類似した固有軌道要素(英語版)を持つ小惑星の集団を「族」(family)と呼ぶ。 これらのグループは同一の母天体(原始惑星)が分裂して母天体に近い軌道を回り続けているものや、木星などの引力の影響で一定範囲の軌道に集まったものと考えられており、基本的には前者を「family」と呼ぶ。 「family」を最初に発見したのは日本の平山清次であり、21世紀初頭までにメインベルトで数十の「family」が発見されている。外縁天体については、2007年に2003 EL61(後のハウメア)を含む「family」が存在する可能性が報告された。 メインベルト小惑星 木星との共鳴により、小惑星が分布しないカークウッドの空隙などを境界に、いくつかの族 (family) に分類されている。表は代表的な族のみ。 族軌道長半径(AU)離心率軌道傾斜角(°)代表的な小惑星フローラ族 2.15 - 2.35 0.03 - 0.23 1.5 - 8.0 (8) フローラ ベスタ族 2.26 - 2.48 0.03 - 0.16 5.0 - 8.3 (4) ベスタ マッサリア族 2.37 - 2.45 0.12 - 0.21 0.4 - 2.4 (20) マッサリア ニサ族 2.41 - 2.5 0.12 - 0.21 1.5 - 4.3 (44) ニサ マリア族 2.5 - 2.706 0.057 - 0.16 12 - 17 (170) マリア エウノミア族 2.53 - 2.72 0.08 - 0.22 11.1 - 15.8 (15) エウノミア パラス族 2.71 - 2.79 0.25 - 0.31 32 - 34 (2) パラス ゲフィオン族 2.74 - 2.82 0.08 - 0.18 7.4 - 10.5 (1272) ゲフィオン コロニス族 2.83 - 2.91 0 - 0.11 0 - 3.5 (158) コロニス エオス族 2.99 - 3.03 0.01 - 0.13 8 - 12 (221) エオス ヒギエア族 3.06 - 3.24 0.09 - 0.19 3.5 - 6.8 (10) ヒギエア テミス族 3.08 - 3.24 0.09 - 0.22 0 - 3 (24) テミス キュベレー族 (65) キュベレー メインベルト以外の小惑星は特異小惑星と呼ばれる。 共鳴小惑星 公転周期が惑星と整数比の軌道の中には、安定で、多くの小惑星が分布するものがある。トロヤ群は、惑星と太陽を頂点とする正三角形の第3の頂点、つまりラグランジュ点のL4、L5点に位置する。 群など軌道長半径(AU)公転周期(年)惑星公転周期(年)共鳴比備考地球の準衛星 1.00 1.00 地球 1.00 1:1 常に地球の近くに位置する。 火星トロヤ群 1.52 1.88 火星 1.88 1:1 太陽 - 火星のL4、L5点。 ハンガリア群 1.85 2.52 火星 1.88 4:3 アリンダ族 2.50 3.95 木星 11.86 1:3 地球近傍小惑星でもある。 ヒルダ群 3.97 7.91 木星 11.86 2:3 木星と衝の頃、近日点通過(木星に近づかない)。 チューレ群 4.28 8.90 木星 11.86 3:4 2つのみ発見。 木星トロヤ群 5.20 11.86 木星 11.86 1:1 太陽 - 木星のL4、L5点。 海王星トロヤ群 30.11 164 海王星 164 1:1 太陽 - 海王星のL4、L5点。 小惑星 地球近傍小惑星 地球の準衛星 小惑星帯 木星のトロヤ群 ダモクレス族(逆行小惑星) ケンタウルス族 太陽系外縁天体 関連項目 小惑星の衛星 彗星・小惑星遷移天体 太陽系小天体(彗星) ■Portal ■Project ■Template 地球近傍小惑星 (NEA) 地球軌道の近くを通るもの。いくつかのグループに分けられるが、特に上から3つを指すことが多い。アテン群…軌道長半径が1 AU以下で遠日点が0.983 AU以上のもの。 アポロ群…軌道長半径が1 AU以上で近日点が1.017 AU以下のもの。 アモール群…軌道長半径が1 AU以上で近日点が1.017 AU以上1.3 AU以下のもの。アポロ群とまとめて、アポロ・アモール天体ということもある。 アリンダ族…軌道長半径が約2.5 AUで離心率が0.4 - 0.65のもの。木星の公転周期の3分の1の公転周期を持ち、近日点は1AUに近い。 ダモクレス族 (Damocloid)…長楕円軌道や、黄道平面から大きく傾いた軌道を取る。オールトの雲由来だと考えられている。 潜在的に危険な小惑星(PHA)…地球近傍小惑星の中でも特に衝突する可能性と衝突した場合の危険性が高い小惑星のこと。 ○○横断小惑星 近日点と遠日点が、それぞれ対象となる惑星の公転軌道より内側と外側にある小惑星。地球近傍小惑星の多くは地球横断小惑星ということもできる。水星横断小惑星 金星横断小惑星 地球横断小惑星 火星横断小惑星 木星横断小惑星 土星横断小惑星 天王星横断小惑星 海王星横断小惑星 ケンタウルス族 (Centaur) 軌道長半径が30 AU以下。近日点は木星軌道から天王星軌道の間に、遠日点は土星軌道から海王星軌道の間にあるものが多い。木星などの摂動を受けやすく、軌道は不安定。彗星起源と考えられており、太陽系外縁天体に分類されることもある。 逆行小惑星 軌道傾斜角が90度を超えるもの。ダモクレス族と重複するものも多い。 太陽系外縁天体エッジワース・カイパーベルト(海王星との軌道共鳴) (3:4) 冥王星族 (2:3) (3:5) キュビワノ族 ( - ) (1:2) 散乱円盤天体 オールトの雲 類似天体 ケンタウルス族 海王星のトロヤ群 彗星(遷移天体) 関連項目 準惑星(冥王星型天体) 太陽系小天体 ■Portal ■Project ■Template 太陽系外縁天体も、いくつかのグループに分かれている。 エッジワース・カイパーベルト天体 (EKBO) 共鳴TNO3:4共鳴天体…軌道長半径が36 - 36.4 AUで、海王星の公転周期(166.5年)の4/3倍の周期を持つもの。 冥王星族(Plutino、2:3共鳴天体)…軌道長半径が39 - 40.5AUで、海王星の公転周期の3/2倍の周期を持つもの。 3:5共鳴天体…軌道長半径が42 - 42.5 AUで、海王星の公転周期の5/3倍の周期を持つもの。 トゥーティノ族(Twotino、1:2共鳴天体)…軌道長半径が48.0 - 48.5 AUで、海王星の公転周期の2倍の周期を持つもの。 その他の共鳴天体…海王星と4:7、3:7、2:5、3:8、1:3などの共鳴関係にあるかもしれない外縁天体が見つかっている。 キュビワノ族(Cubewano、古典的TNO)…軌道長半径が41 AU以上で、離心率が0.15以下のもの。 散乱円盤天体 (SDO) 離心率が大きく、遠日点ではエッジワース・カイパーベルトの外縁を超えるもの。 さらに遠くの軌道を回る天体 E-SDO、内オールトの雲天体など。分類は進んでいない。 他にも多くの族・群がある (Asteroid groups and families)。
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