固有語と借用語の力関係
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/19 09:50 UTC 版)
世界中の言語の中で、語彙の内部に一定の「借用語」カテゴリーがあるという明確な意識を使い手がもっていないのは、母語話者のいない(もしくはごく少ない)、死語となった古典文明語(古典ギリシア語、ラテン語、アラビア語(フスハー)、古典ヘブライ語、漢文、サンスクリット語、パーリ語、チベット文語)にとどまる。 一方、生きた自然言語、とりわけ書記言語を備え公用語としての機能をもつ言語には、「文化語彙」の多くを外部からの文化的、政治的影響によって系統的に借用しているものが極めて多い。例えば日本語や朝鮮語、ベトナム語は中国語から、英語やドイツ語は古典ギリシア語、ラテン語、フランス語から、スペイン語はアラビア語から、テトゥン語(東ティモールの公用語)はポルトガル語、マレー語およびインドネシア語から語彙を借用している。この中にはそれ自体が上層言語となって他言語に借用されている古典語及びその子孫も含まれる。例外的に、上記古典文明語の直系の子孫と見なされる中国語と現代ヘブライ語には、借用語、とりわけ音訳借用語が比較的少ない。また外部からの文化的影響に対する防衛のため、音訳借用を避けて固有語を用いた翻訳借用(ただし上層言語を参照する場合が多い)を造語の主な手段とする言語もある。フランス語からの自立を図ったドイツ語、中国語・ロシア語の浸食に対抗するモンゴル語、日本語への強力な同化志向を排除しなければ復興できないアイヌ語などがこれに当たる。
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