エッジワース・カイパーベルト天体とは? わかりやすく解説

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エッジワースカイパーベルト‐てんたい【エッジワースカイパーベルト天体】

読み方:えっじわーすかいぱーべるとてんたい

カイパーベルト天体


エッジワース・カイパーベルト天体

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/01/23 16:07 UTC 版)

太陽系外縁天体
エッジワース
・カイパー
ベルト

(海王星との
軌道共鳴
(3:4)
冥王星族 (2:3)
(3:5)
キュビワノ族 ( - )
(1:2)
散乱円盤天体
オールトの雲
類似天体 ケンタウルス族
海王星トロヤ群
彗星遷移天体
関連項目 準惑星冥王星型天体
太陽系小天体
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エッジワース・カイパーベルト天体(エッジワース・カイパーベルトてんたい、英:Edgeworth-Kuiper Belt Object、EKBO)は、太陽系の中で海王星軌道より遠い天体太陽系外縁天体、TNO)のうち、エッジワース・カイパーベルトにある天体の総称。単にカイパーベルト天体ともよばれる。

なお、日本学術会議による2007年4月9日対外報告(第一報告)では、「エッジワース・カイパーベルト天体」および「カイパーベルト天体」を「TNO(海王星以遠天体)」の別名としているが、TNOとはカイパーベルト外の天体も含んだ海王星以遠に存在する天体の総称であり、異なる概念である。

概要

狭義には軌道長半径が約30 au~約48 auの天体を指す。仮説上のオールトの雲や内オールトの雲よりは内側の天体である。小惑星帯(メインベルト)で最大の (1) ケレス(直径約950 km)を超えるものもいくつかあり、総質量はメインベルト小惑星の数百倍と推算されている。

(134340) 冥王星カロン(冥王星の第1衛星)、 (50000) クワオアーなどがEKBOに含まれる。また、軌道長半径が約48 au以上で離心率が大きい散乱円盤天体 (SDO) をEKBOに含めることがある。SDOとしては (136199) エリスなどがある。

ただし、(90377) セドナは、軌道が非常に大きいだけでなく、近日点 (76 au) でもエッジワース・カイパーベルトよりかなり外側なので、EKBOには含めない。

(2060) キロンなどケンタウルス族や、短周期彗星、海王星の衛星トリトン土星の衛星フェーベなどは、その軌道および成分などから、元はEKBOだったと考えられている。

直径の大きいものとしては、冥王星エリスが最大級のものとして知られているが、このどちらがより大きいかははっきりと分かっていない。一方、これまでに発見された中で最も直径の小さいクラスのものとしては、2019年1月に宮古島にて発見された半径約1kmのものが知られており、これほど遠くて小さい天体は巨大望遠鏡を用いても直接観測が不可能であり、小型望遠鏡で掩蔽を観測したことによって発見された[1]

分類

大きなEKBO。共鳴天体は赤、キュビワノは青、SDO(近いもののみ)は灰色。横軸は軌道長半径、縦軸は軌道傾斜角。
EKBOの分布。共鳴天体は赤、キュビワノは青、SDO(近いもののみ)は灰色。横軸は軌道長半径、縦軸は軌道傾斜角。
軌道長半径で分類したキュビワノと共鳴天体
  • 散乱円盤天体 (SDO)
    軌道長半径が約48 au~約400 auで、離心率が大きい天体。近日点距離は約30~40 au(ほとんどは約30 auを大きく超えない)、遠日点ははるか遠く(約70~数百 au)にある。海王星の重力によって、エッジワース・カイパーベルトから散乱させられた天体である。太陽から遠く暗いため、未発見の大きなものが多数あると推測されている。最大の (136199) エリスもSDOである。なお、SDOをEKBOに含めないこともある。
    • (90377) セドナを便宜上SDOに含めることがあるが、EKBOには含めない。
    • ケンタウルス族を、内側への散乱天体として、外側への散乱天体であるSDOと一括してあつかうことがある。
  • 狭義のEKBO
    • 共鳴天体(共鳴TNO、共鳴EKBO)
      海王星との軌道共鳴により、公転周期が整数比(尽数関係)にある天体。海王星との永年共鳴と摂動により、離心率軌道傾斜角が増大している。軌道が大きくSDOの定義に当てはまるものは、SDOに分類することもある。なお、以下の「3:2」などは公転周期の比だが、角速度の比を表す(つまり3:2の代わりに2:3とする)流儀もある。
      • 冥王星族(プルーティノ)
        海王星との3:2共鳴天体。公転周期約247年、軌道長半径約39.4 auで、エッジワース・カイパーベルトの内縁付近に位置する。(134340) 冥王星など。
      • トゥーティノ族
        海王星との2:1共鳴天体。公転周期約330年、軌道長半径約47.7 auで、エッジワース・カイパーベルトの外縁付近に位置する。(26308) 1998 SM165など。族名のtwotinoは、two + plutinoからの造語である。
      • 他に4:3、5:3共鳴天体がある他、4:7、3:7、2:5、3:8、1:3などの共鳴天体かもしれないと考えられている天体も知られている。1:1共鳴天体もあるが、EKBOではなく海王星のトロヤ群である。
    • キュビワノ族(古典的TNO、古典的EKBO)
      EKBOのうち、SDO・共鳴天体以外のもの。海王星の永年共鳴を受けないため、軌道傾斜角も離心率も低く、ほとんどは離心率0.2以下、軌道傾斜角10°以下である。近日点距離は35 au以上で、あまり海王星には近づかない。軌道長半径は、ほとんどがトゥーティノと冥王星族の間の41 au~48 auである。族名は、最初に発見された (15760) アルビオンの当時の仮符号1992 QB1(キュービーワン)からきている。

2006年のIAU総会で、静水平衡、つまり重力でほぼ球形になった天体(惑星・衛星以外)はdwarf planet(準惑星)に分類され、また太陽系外縁天体の新しいサブグループ(正式名称は2008年に plutoid と決まった。日本学術会議は2007年4月9日の対外報告(第一報告)で、日本語名称として冥王星型天体を推奨している)も定義された。EKBOでは(134340) 冥王星、(136199) エリス、(136108) ハウメア、(136472) マケマケが準惑星(冥王星型天体)に属する。今後の観測・研究によって、さらに増えると予想されている。

なお、EKBOを含めTNOは世界各地の創世神話にちなんで命名すると決められている。例えば、クワオワーはアメリカ先住民トングヴァ族の、セドナはイヌイットの創世神話から名づけられた。

主なEKBOおよび関連天体

主な天体の大きさの比較
主なEKBO(背景色は種類を表す)と関連天体(白背景・斜体)。
名前の付いたもの、大きいものなど。
確定符号 名前
(仮符号)
種類 直径
(km)
公転周期
(年)
衛星 発見 備考
Saturn IX フェーベ 土星の衛星 220 (29.46) - 1898 逆行衛星
2060 キロン ケンタウルス族 132 ~ 142 50.54 - 1977 最大のケンタウルス族
Neptune I トリトン 海王星の衛星 2,707 (164.77) - 1846 逆行衛星
(未登録) 2001 QR322 海王星トロヤ群 50 ~ 160 165.7 - 2001  
(15836) 1995 DA2 4:3共鳴天体 40 ~ 140 220.2 - 1995  
38083 ラダマントゥス 冥王星族 約160 245.79 - 1999  
90482 オルクス 冥王星族 840 ~ 1,880 247.94 1 2004 準惑星候補天体
134340 冥王星 冥王星族 2,370 248.54 3 1930 準惑星。
最初に発見された
Pluto I カロン 冥王星族 1,186 (248.54) - 1978 冥王星の衛星
28978 イクシオン 冥王星族 822以下 248.63 - 2001 準惑星候補天体
38628 フヤ 冥王星族 300 ~ 700 250.36 - 2000  
(55637) 2002 UX25 キュビワノ族 約910 277.31 1 2002 準惑星候補天体
20000 ヴァルナ キュビワノ族 約936 283.20 - 2000 準惑星候補天体
136108 ハウメア キュビワノ族 1,960 ×
1,520 × 1,000
285.4 2 2003 準惑星。
歪んだ形をしている
50000 クワオアー キュビワノ族 1,250 ± 50 285.92 1 2002 準惑星候補天体
15760 アルビオン キュビワノ族 約120 289.225 - 1992 「EKBOとしては」最初に発見
53311 デュカリオン キュビワノ族 90 ~ 300 295.54 - 1999  
58534 ロゴス キュビワノ族 80 305.80 1 1997  
19521 カオス キュビワノ族 約560 309.10 - 1998  
136472 マケマケ キュビワノ族 1,600 ~ 2,000 309.87 1 2005 準惑星
(55565) 2002 AW197 キュビワノ族 700 ± 50 327.25 - 2002 準惑星候補天体
(26308) 1998 SM165 トゥーティノ族 130 ~ 400 327.38 1 1998  
(84522) 2002 TC302 5:2共鳴天体 1,200以下 408.03 - 2002 準惑星候補天体。
SDOに含めることも
(未登録) 2004 XR190 分離天体 425 ~ 850 430.91 - 2004 特異な軌道を持つ
136199 エリス 散乱円盤天体 2,326 557 1 2003 準惑星
(15874) 1996 TL66 散乱円盤天体 約630 754.83 - 1996 最初に発見されたSDO
(87269) 2000 OO67 散乱円盤天体 28 ~ 87 11,624 - 2000  
90377 セドナ 分離天体 1,180 ~ 1,800 12,050 - 2003 準惑星候補天体

脚注

  1. ^ [1]

関連項目

外部リンク


エッジワース・カイパーベルト天体

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太陽系外縁天体」の記事における「エッジワース・カイパーベルト天体」の解説

詳細は「エッジワース・カイパーベルト」および「エッジワース・カイパーベルト天体」を参照 エッジワース・カイパーベルト太陽からの平均距離が 30-55 au天体含み多く円軌道近く黄道からの傾斜角小さ軌道を持つ。エッジワース・カイパーベルト天体はさらに、海王星との軌道共鳴固定されている共鳴外縁天体と、「キュビワノ族」とも呼ばれる古典的カイパーベルト天体分類できる後者海王星との軌道共鳴捕獲されておらず、海王星摂動受けずほぼ円軌道公転している。共鳴外縁天体には多く下位分類があり、主要なものとして海王星との 1:2 共鳴入っているトゥーティノ族2:3 共鳴入っている冥王星族がある。キュビワノ族属す天体には、アルビオンクワオアーマケマケなどがある。

※この「エッジワース・カイパーベルト天体」の解説は、「太陽系外縁天体」の解説の一部です。
「エッジワース・カイパーベルト天体」を含む「太陽系外縁天体」の記事については、「太陽系外縁天体」の概要を参照ください。

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