収蔵公文書破棄問題
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2016年10月下旬、千葉県文書館の収蔵資料数が2015年度中に大幅に減少していることが、文書館が毎年発行している『事業概要』を見た研究者たちの指摘によって明らかとなった。このことを問題視した日本アーカイブズ学会は、同学会は11月8日付で、千葉県知事、千葉県総務部政策法務課長、千葉県文書館館長の3者に対して公開質問状を提出した。その後の千葉県からの回答や情報公開請求などによって明らかになったところによれば、2015年3月31日の時点で142,375冊あった収蔵公文書のうち、2016年3月31日までに13,039冊が減少し、うち10,177冊が破棄、2,862冊が千葉県政策法務課の書庫に移管されていた。 公文書等の管理に関する法律が2011年4月に施行されたことにともない、「千葉県行政文書管理規則」及び「千葉県行政文書管理規則の運用について」が改正され、2015年4月1日より施行された。それまでは文書保存期間に「長期」(事実上の永久保存)という区分があったが、このときに廃止され、保存期間は最長で30年となり、保存期間を過ぎた文書については保存期間満了時に選別を受け、歴史公文書と判定されたものは文書館に移管、現用文書と判定されたものは保存期間延長、それ以外は破棄、ということになった。ところが、このルールが、すでに文書館に収蔵され閲覧請求の対象となっていた公文書にも遡及して適用され、公文書の再評価・選別が行われたために、多数の破棄文書が生じたのである。 さらに、日本アーカイブス学会による調査で、選別が適切に行われていない実態が明らかとなった。たとえば、千葉県の歴史・文化・学術・事件などに関する重要な情報が記録された文書は歴史公文書とする規定があるにもかかわらず、1973年(昭和48年)の第28回国民体育大会(若潮国体)に関係する公文書が破棄されていた。また、1952年度(昭和27年度)までに作成・取得された文書はすべて歴史公文書とする規定があるにもかかわらず、それ以前に作成された公文書91冊が廃棄されたほか、遺族台帳や戦没者名簿、引揚関係書類など、戦争に関する公文書等が約500冊廃棄されていた。政策法務課に移管された文書にも、明治期に遡る人事記録など、現用文書と言い難いものが含まれていた。 2017年2月21日付で、アーカイブズ学・考古学・歴史学関係14団体が連名で、「千葉県文書館収蔵公文書の不適切な大量廃棄・移動の停止を求める要望書」を千葉県知事に提出した。3月27日、県・学界双方の合意による懇談会が開かれ、この席で、1人しかいない公文書担当の専門職が2015年度には他部署に出向しており、専門職不在の中で評価・選別が行われていたことや、1952年以前の公文書の破棄を文書館長が把握していなかったことなど、ずさんな実態が明らかとなった。 2017年4月7日、文書館長と県政策法務課長が緊急記者会見を開き、県の事務に瑕疵があったことを認め、公式に謝罪した。文書館では再発防止のため、マニュアルの作成と制度整備を進めるとともに、2018年8月、史料選別に対する第三者によるチェック機能として、「歴史公文書判定アドバイザー制度」を制定・施行した。
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