医療機関の救急自動車(病院救急車)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/27 00:54 UTC 版)
「日本の救急車」の記事における「医療機関の救急自動車(病院救急車)」の解説
医療機関が所有する救急車は、患者容体の急変や専門外の治療など他施設へ転院搬送を要する患者の救急搬送に主に使用される車両である。「病院救急車」は俗称で、法令上の正式名称は消防と同じく「救急自動車」である。 管轄省庁は 厚生労働省である。このため、医療機関の救急車は総務省消防庁発出の「救急業務実施基準(昭和39年3月3日自消甲教発第6号)」による通達の規制を受けない。 ドクターカーも、医療機関の救急車の一種である (詳細はドクターカーの項を参照)。 搬送される患者と共に、医療機関の看護師や、付き添いの家族が同乗し、容体によっては主治医も同乗する。産婦人科を有する医療機関が母体搬送する場合、医師とともに助産師が同乗することもある。 救急科だけでなく他の診療科の使用も考慮して、汎用性の高い2B型救急車を所有する医療機関が多い。医療機関によっては、ステーションワゴンやミニバン、軽ワゴン車などを改造して救急車にしているところもある。 出動件数や走行距離が少ないため車体の損耗が少なく、車両更新期間が長く、旧年式の車両も少なくない。 通常時(待機時)の装備は、ストレッチャー、酸素ボンベ一式、点滴フック、救急蘇生セット一式、程度と比較的簡素である。高齢者が多い医療機関では、吸引器や車イスを積載するリフトの装備もみられる。 各診療科ごとに必要とする医療機器が異なるため、患者モニターや人工呼吸器、精密輸液ポンプ、超音波エコー、など通常時は車内に未搭載の機器が必要な場合は、診療科の外来や病棟の機器を一時的に搭載するなど、拡張性の高い運用が行われている。 医療法が定める病院だけに限らず、診療所、有床診療所、医院・クリニック、被災地の仮設診療所なども所有できる。公安委員会の緊急車両指定に施設あたりの台数制限はなく、複数の救急車を運用する施設もある。 救急車を所有しない医療機関などで転院搬送を要する場合は、地元消防の救急車に出動を依頼する。消防本部によっては、送り手側の医療機関に対し主治医の署名・押印が入った 「転院搬送依頼書」など所定の書類提出を要求するところもある。 転院搬送時に、患者と共に紹介状や各種検査データ、看護サマリーなど一式の「診療情報提供書」が、送り側から受入れ側へ引き継がれる。 医療機関の救急車に搭載されている主な医療用資器材 医療機関や各診療科によって、車内で使用する医療機器や薬剤、搬送される患者の症状や程度は大きく異なるため、搭載する器材などは消防と異なり画一化や規格化がされていない。通常時(待機時)、車内はストレッチャーや酸素ボンベ一式、救急蘇生セットなど、最低限の医療機器のみを搭載し、実際の搬送時は、患者の容態に応じて外来や病棟で使用している医療機器を一時的に搭載するといった、弾力的な運用を行っている。 大学病院や一部の病院の救急車には、超音波エコー装置や精密輸液ポンプ、気管切開、体腔穿刺(胸腔・心嚢・腹腔穿刺やドレナージなどを含む)用の器材一式、骨内注射用機器一式、など車内での簡易な救急処置・外科手術セットを搭載しているものも見られる。災害時には、DMAT隊として災害医療に出動する車両もある。 産婦人科やNICU(新生児集中治療室)、GCU(回復治療室)などを有する医療機関の救急車は、車内に未熟児用の保育器や補助人工心肺などの医療機器が搭載されているものもある。 自治体消防の救急車と異なり、赤色灯やサイレンを消して走行すれば一般車両の患者搬送車としての運用が可能であるため、転院搬送のために車イスを車内に搭載しているものもある。 高機能型救急車 2B型救急車 一部の地方自治体病院では、同じ自治体の消防本部で更新により不要になった旧型の高規格救急車を廃車にせず、整備し転属させ、自治体病院の2B型救急車として再利用するケースがある。 「送り搬送」や「迎え搬送」、「三角搬送」、「下り(くだり)搬送」などは、医療機関の救急車に特徴的な搬送方式である。緊急を要しない転院搬送の場合は、基本的に赤色灯やサイレンが装備されていない「患者搬送車」での搬送となるが、下り搬送などの場合は、医療機関の救急車がサイレンを消して患者を搬送することもある。 医療機関の一般的な救急車の場合、利用する者は基本的に当院に入院中の患者か外来受診中の患者に限られる。従って、救急車に乗せる前の段階で医師による診察、検査、応急処置を院内である程度行うことが出来るため、搬送に耐えられる程度まで患者の状態が安定しているケースを主として想定している。生命に危険が生じているなどの重篤患者の場合は、消防の高規格救急車を呼ぶか、ドクターカーを所有している三次医療機関に搬送(迎え搬送)を依頼する場合もある。 医療機関の救急車は、施設の職員が運転 を務めて医師や看護師は携わらないが、医師一人で待機するドクターカーで医師が運転する事例もある。救急車の運転に「普通運転免許」以外の資格は不要である。 大規模災害時、武力攻撃事態、テロ発生などの有事に医療機関の救急車が搬送に協力する場合があるが、国民保護法や災害対策基本法に基づきあらかじめ指定された一部の指定医療機関、災害拠点病院の救急車が大半である。 車内に消火器を積載しているが、これは救急車内で高濃度の医療用酸素ガスを取り扱うためである。
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