助動詞・助詞・各種表現
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/20 01:48 UTC 版)
断定 断定の助動詞(形容動詞の語尾を含む)は、「や」と「じゃ」がある。かつては「じゃ」が一般的で「美濃のじゃ言葉」と呼ばれたが、急速に衰退し現在は高齢層に限られている。隣接する愛知県では「だ」を使うが、愛知県でも岐阜県に近い一宮市・江南市などの尾張北西部では「や・じゃ」を使用する。東濃の恵那市南部(旧岩村町・山岡町以南)では「だ」も使用する。恵那市三郷町には「だじゃの松」があり、「や(じゃ)」使用地域との境界だったと言われている。 否定 動詞の否定形では、「未然形+ん」「未然形(原則)+(や)へん/せん」が用いられる。西美濃では上一段・サ変動詞で「ひん」も使われる。例えば、「書かん/書かへん/書かせん」「見ん/見やへん/見いせん/見いひん」など。否定の過去形は「なんだ」「へなんだ」「せなんだ」を使い、若年層は「んかった」を使う(書かなんだ、書かへなんだ、書かせなんだ、書かんかった)。否定の仮定形(…なければ)は、「な」「にゃ」「へな」など。 推量・意志・勧誘 推量の助動詞は、「やろ(ー)」(高齢層で「じゃろ(ー)」)、「らしー」が使われる。一部地域に「しこーや」もある。ほかに東美濃の高齢層を中心に、東海東山方言に特徴的な「ら」「やら」「ずら」「ず」「す」が使われる。これらは西美濃でも旧板取村や美濃市などにはあるが少ない。東美濃でも若年層では「ず」「ずら」は使わない。「ら」「やら」「ずら」は「行くら」のように用言の終止形に接続し、「ず」「す」は「行かず」「行かす」のように未然形に接続するほか、「行かーず」のような形にもなる。土岐市など一部では「やら」に「ず」を付けた「やらーず」という形も使われ、恵那市南部には三河的な「だら」「だらず」もある。これらには微妙な使い分けがあり、「やら」は「やろ」よりも確実な推量を表し、「ら」はさらに確実な推量で念を押す場合に用いられる。 意志を表す場合、共通語と同じ「行こう」のほか、主に東美濃で「す」または「し」(行かす、行かし)が用いられる。 否定推量を表すのに、「降らまい/降るまい」のような「まい」があるが、近年は「…んやろ/へんやろ」が一般的である。「まい」はむしろ、「行こまい(か)」のような形で勧誘に用いられる。美濃北部では「行かまい(か)」のように未然形接続となる。 進行・完了相 美濃北部や西美濃ではアスペクトを区別し、進行形は「連用形+よる」、完了形は「連用形+とる」となるが、現在では区別が失われ、どちらも「連用形+とる」を用いることが多い。関市・美濃市付近では「ちょる」も用いる。(例)飛んどる(飛んでいる)、待っちょる(まっている)。 尊敬 尊敬表現の助動詞には美濃弁では様々なものが使われる。っせる…名古屋弁と共通し、美濃弁でも広く使う。富山弁(主に砺波地方や射水市にて)や飛騨弁にある「っしゃる」が下一段活用に変化したものとされる。ござらっせる(いらっしゃる)、言わっせる(おっしゃる)、しとらっせる(していらっしゃる)などのように未然形に接続。下一段活用。一段活用動詞に付く場合は「さっせる」「らっせる」「やっせる」になる。「っする」「っしる」の形もある。 やーす…名古屋弁と共通し、西美濃を中心に使われる。東美濃では新しく入ってきた表現と言われる。「行きやす」「行きやーす」「行きゃーす」のような諸形がある。 んさる…美濃弁で広く使われる。「なさる」の変化。「行きんさる」のように連用形に接続。五段活用。 なる…北濃(郡上市付近)を中心に、西美濃の年配女性でも使われる。「なさる」の変化したもの。「行きなる」のように連用形に接続。これが下一段活用化した「なれる」が西美濃東部から東美濃、美濃北部で用いられる。命令形「なれ」「ない」がある。(例)「休みなれ」 やる…近江弁と共通するもので、西美濃で使われる。「行きやる」のように連用形に接続。尊敬語と言うよりは親愛語である。 以上の他、美濃西縁には近畿方言的な「はる」「んす」、東濃の旧恵那郡南部には三河方言的な「…る」「お…る」もある。 尊敬の補助動詞としては、名古屋弁的な「…てみえる」が西美濃を中心に使われる。ほかに「…ておいでる」「…てござる」もある。 使役 使役の助動詞は、共通語と同じ「せる/させる」が一般的だが、西美濃では近畿方言的な「す/さす/やす」も用いられる。連用形「書かした」、未然形「書かさん」の形はよく使うが、終止形「書かす」の使用は多くない。「書かす」「見さす」「見やす」のように、「す」は五段活用の動詞、「さす」「やす」は一段活用の動詞に接続する。 可能 受身・可能の助動詞「れる/られる」は共通語と同じであるが、可能表現で「見れる」の形が広まっている。また能力可能を表すのに、西日本的な「よー書く」の形を用いる。(例)そんなんようせんわ(そんなこと出来ません)。 理由の接続助詞には主に「で」や「もんで」を用いる。例:「やっとくで」(やっておくから)。仮定の順接で「とさいが」が使われる。例:「行くとさいがそこにあるやろ」(行けばそこにあるだろう)。 文末助詞としては、「な」「ね」「の」「よ」「わ」の他、より丁寧なものとして濃尾地方で共通の「なも」や、「なーし」「なし」「なん」等がある。(例)「やっとかめやなも」(久しぶりですねえ)
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