初期のタイムシェアリングシステムと仮想マシンシステム
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/08/12 02:29 UTC 版)
「IBMメインフレーム用オペレーティングシステムの歴史」の記事における「初期のタイムシェアリングシステムと仮想マシンシステム」の解説
MITのフェルナンドコルバトは、メインフレームのIBM 704とIBM 7090を使い、CTSSなどの初期の実験的なタイムシェアリングシステムを1957年から1960年代初頭に開発した。これらのシステムはジョン・マッカーシーから提案されたアイデアに基づいていた。IBMは自社の複数の研究所で1960年代にタイムシェアリングシステムの実験をしており、市販のメインフレームをベースにハードウェアとマイクロコードを修正して仮想メモリをサポートし、1960年代初頭にIBM M44/44X、1964年から1967年にCP-40、1967年から1972年にCP-67を開発した。CP-67に至っては1968年から1972年までの間に無保証で複数の大手顧客にリリースしていた。CP-40とCP-67にはSystem/360 CPUシリーズに改造が必要だったが、M44/44Xは内部構造が大きく異なる最初期のCPUであるIBM 7044で動作した。 これらのプロトタイプはIBMが1964年に発売したSystem/360シリーズには間に合わなかったものの、IBMはこれを足掛かりにして1972年に発売したSystem/370で仮想メモリと仮想マシンに対応した。 M44/44Xの仮想マシンは限定的な物であり、スラッシングにより仮想メモリシステムの速度が大幅に低下する可能性があった。スラッシングとは、物理メモリとディスクの間で仮想メモリページをシャッフルするのに多くの時間が割かれてしまい、システムが非常に遅くなる状態のことである。 IBMはCP-40とCP-67の開発を通じてどのようにスラッシング問題に対処すればよいのかを学習した。新たな仮想メモリと仮想マシンのテクノロジーは非常に高速かつ信頼性があり、メインとなる市場での負荷の高い商用システムでの使用に耐えるものだった。自動化された仮想メモリは優秀なプログラマが開発したオーバーレイ方式のプログラムと同様のパフォーマンスをコンスタントに叩きだせるとしてデビッド・セイヤーは会社に採用を迫った。 コンピュータソフトウェアシステムという名前のコンサルティング会社は1968年にリリース版のCP-67を用いて商用タイムシェアリングサービスを提供した。同社の技術チームはMITの卒業生であるディック・オレンシュタインとハロルド・ファインリーブの2人を新卒で採用していた(前述のCTSSを参照)。会社の規模拡大に伴い社名をナショナルCSSに改め、サポートを求める有料ユーザーが増えるようにシステムに大幅な改良を加えてOSの名前をVP/CSSに変えた。1980年代初頭にIBMがVM/370(詳細は後述)を投入して市場を奪われるまで、VS/CSSはナショナルCSSの主力商品だった。 これらの他にも1960年代後半には複数の大学が3つのS/360用タイムシェアリングOSを開発していた。 ミシガンターミナルシステム (MTS)はミシガン大学主導のコンソーシアムが1967年に開発したOS。S/360-67以降の仮想メモリ機能を持つ全てのIBMメインフレーム機に対応していた。MTSは1999年まで運用された。 モントリオールのマギル大学は1969年にMUSIC (McGill University System for Interactive Computing)の開発を開始した。MUSICはアップグレードを繰り返し、最終版までにテキスト検索、ウェブサーバ、メールサーバ、ソフトウェア開発ツールなどに対応した。IBMはMUSICを同社のメインフレーム機で動作する主に教育機関向けの安価な選択肢として位置付け、1985年にIBMの公式な製品ラインナップ(MUSIC/SP、Multi-User System for Interactive Computing / System Product)として加えた。公式な最終バージョンは1999年にリリースされた。 ORVYLとWYLBURはスタンフォード大学が1967-68年にIBM S/360-67向けに開発したOS。これらによりIBM S/360で初めてタイムシェアリング機能が使えるようになった。
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