冷戦と代理戦争
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/13 14:56 UTC 版)
パレスチナ人作家ガッサーン・カナファーニーは、1948年のイスラエル侵入を描いた「遥かなる部屋のフクロウ」、クウェートへの密出国をはかる男たちを描く『太陽の下の男達』(1963)などパレスチナ戦争を題材にした作品を書いている。 朝鮮戦争中には、占領下のソウルを描いた廉想渉『驟雨』(1952-53)、占領下の平壌を描いた韓雪野『大同江』(1952-54)などが書かれた。その後戦後の混乱を描いた作品や、軍隊の生活を描いた兵営小説が書かれ、1974年から朝鮮戦争を扱った大河小説、洪盛原『されど』が5年間の長期連載で発表。続いて金源一『火の祭典』(1983)、趙廷来『太白山脈』(1983-89)などの大河小説が発表された。朝鮮戦争に参戦した米軍の移動野戦病院を舞台にした風刺小説として、リチャード・フッカー『マッシュ』(1968)がある。ジェイン・アン・フィリップス『ラークとターマイト』(Lark and Termite, 2009)ではアメリカ軍による民間人虐殺・老斤里事件を、戦死したアメリカ軍兵士の子供たちの視点で描いている。 アルジェリア戦争でフランスでは、アルジェリア民族解放戦線への連帯を主張するサルトルらを中心として、多くの知識人による「121人宣言」が発せられ、またサルトルとアルベール・カミュによる激しい論争が行われた。アラン・シリトー『ウィリアム・ポスターズの死』(1965)、『燃える樹』(1967)では、イギリスの工場労働者が放浪の果てにアルジェリア民族解放戦線の兵士として参戦する経緯が描かれる。 キューバ革命で指導的役割を果たしたチェ・ゲバラは『革命戦争回顧録』(1963)、次いで身を投じたボリビア革命における『ゲバラ日記』(1968)などを残している。ナイジェリアのチヌア・アチェベは、ビアフラ戦争下の人々を描いた「アンクル・ベンの選択」「戦時下の娘たち」(1972)などを書いた。フレデリック・フォーサイスはビアフラ戦争のルポ『ビアフラ物語』(1969)、アフリカの小国のクーデターに暗躍する傭兵を描く『戦争の犬たち』(1974)などを書く。クリシャン・チャンダル「ペシャワール急行」は第三次印パ戦争での悲惨さを描いている。 中南米諸国の内戦へのアメリカ軍の介入を題材にしたルーシャス・シェパードの「サルバドル」(1984)を始めとする作品群は、SF、マジックリアリズム、スリップストリームといった視点でも高く評価される。ドン・ウィンズロウ『犬の力』(2006)でも、中南米からのアメリカへの麻薬密輸の取締りの背景にある、各国の内戦へのアメリカ政府の介入を取り上げている。湾岸戦争におけるアメリカ陸軍によるイラク兵士生き埋め事件の記憶が、現代を浸食するチャイナ・ミエヴィル「基礎」(2004)が書かれている。 冷戦期における第三次世界大戦の恐怖や、それに連なる軍事衝突を描く作品として、ソ連原潜の亡命劇を描くトム・クランシー『レッド・オクトーバーを追え』(1984)などの軍事スリラー・軍事サスペンス小説が無数に書かれている。
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