冬に凍る川の水槽
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/10 04:15 UTC 版)
リニューアルで設置された「北の大地の四季の水槽」のことである。北海道の激流に生息する魚類を展示したもので、留辺蘂(るべしべ)町の無加(むか)川をイメージしているという。水槽の川には、オショロコマやヤマメ、ニジマス、ブラウントラウト、アメマス、ミヤベイワナ(2013年7月より飼育展示)など6種以上の淡水魚が展示され、氷の下をゆっくり泳いだり、川底でじっとしていたりする姿が観察できる。1月の平均気温が-9.6度で、厳冬期には最低気温が-20℃以下になる屋外に設置されている。普段は流れている川が厚く全面結氷する様子が観察でき、水族館はこれを「世界初・世界唯一の展示」としている。 中村は、館にはヤマメやマスといった一般的な魚しかいないため、魚での集客は不可能と判断し、頭を悩ましていたが、温根湯(おんねゆ)温泉の隣のつるつる温泉で露天風呂に入浴した際、体は温かいのに髪の毛が凍りついた体験をし、この地の自然を用いることに着想を得た。穴(池)を掘り、それを館内からガラス越しに見られるようにしただけの屋外の展示になった理由を、北見市は予算の低減化のためとしている。その一方で留辺蘂(るべしべ)は北海道でも寒さが厳しい地方としられ、中村はそれを「誇り」や「冬の魅力」、「武器」にすることを思いついたとしている。「超厳寒というこの特性はどこにも真似できない」、「本州の水族館で冬を再現するには巨大な冷凍設備が必要」と、中村はいう。テレビ東京のNewsモーニングサテライトは「弱みを強みに変えるという逆転の発送」と報じ、街の活性化にもつながっていると報じている。 この水槽の激流は、豊富な地下水と、ドイツ製の「すごい流れを作り出すポンプ」により実現された。中村によれば、濾過の必要のない井戸を掘りあて、豊富な地下水が手に入り、北海道の淡水魚なら循環ろ過の設備が必要なくなり、その分経費が削減できたと説明した。一台で最大3.3メートル毎秒の流れを作り、整流機能で5m先まで水流がとどく起流ポンプを使うのは、川の水を全て凍らせないためであるとしている。水槽の底の多数の石は、水族館の職員自ら収集し、全て手洗いして敷き詰めている。その成果もあり、魚の産卵行動も見られている。 開館最初の2012年には、この水槽が世界で初めて完全に結氷する日(24時間、水面が氷で覆われた日)を当てるクイズも行われ、結果は2013年1月18日だった。この地方の川は5-6センチは凍るというが、この時期にしては暖かい気温のため、氷の厚さは2センチ弱であった。水族館職員はガラス面が凍り付かぬように、厳寒期でも水槽に潜ってメンテナンスをしている。 屋外展示は水辺には草と樹木が育ち、季節ごとに変わる。春に芽吹き、夏は茂みを形成、秋には紅葉し、冬は積雪し川が凍るといった北海道の渓畔林の光景がみられるように設置されている。
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