冗談と記念品
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/22 07:32 UTC 版)
コンラッドとビーンは、サーベイヤー3号と2人が一枚に収まった写真を撮るために、セルフタイマー装置を密かに持ち込んでいた。このタイマーは標準装備されるものではなかったが、こんな写真を撮れば後になって見た者はどうやってそれを撮影したのかわからなくなり、混乱させることができると考えたのである。しかし月の石を入れたバッグからタイマーを見つけることが出来なくなり、この計画は実行できなかった。 帽子コレクターとして有名だったコンラッドは宇宙服の上からかぶれる野球帽を作り、月面でそれをかぶることを計画したが、出来上がった巨大な野球帽を着陸船内にこっそり持ち込むことは不可能だったため、断念した。 全員が海軍出身の本搭乗員と全員が空軍出身の予備搭乗員たちの間では、ライバル心を発揮して様々ないたずらが行われた。その中の一つに、月面で使うチェックリストの中に雑誌『プレイボーイ』の写真を忍ばせるというものがあった。このチェックリストは宇宙服に取りつけられているもので、予備搭乗員たちはこの中にプレイメイトの縮小版の写真を紛れ込ませ、コンラッドとビーンが最初の船外活動をするときに驚かせてやろうとしたのである。Apollo Lunar Surface Journal website (アポロ月面ジャーナルウェブサイト)では、宇宙服の袖口のチェックリストにこれらの写真が見えているところがPDFファイルで収められている。コンラッドのチェックリストに見えているのは1967年度ミス9月のアンジェラ・ドリアン (Angela Dorian) とミス10月のレーガン・ウィルソン (Reagan Wilson) で、ドリアンの写真には「何か気になる丘と谷間に見えた? (SEEN ANY INTERESTING HILLS & VALLEYS ? 丘と谷間は女性の肉体を象徴している)」、ウィルソンの写真には「(あなたを) つなぎ止めるお好みのパートナー (PREFERRED TETHER PARTNER)」のキャプションが書かれている。ウィルソンの写真が貼られてあるのは、生命維持装置を共有する際に必要な手順について書かれた部分である。一方ビーンのチェックリストに見えているのは1968年度ミス12月のシンシア・マイヤーズ (Cynthia Myers) と1969年ミス1月のレスリー・ビアンチーニ (Leslie Bianchini) で、マイヤーズには「忘れないで—その隆起を説明して (DON'T FORGET - DESCRIBE THE PROTUBERANCES、隆起とはいわゆる『もっこり』のこと)」、ビアンチーニには「彼女の行動を調査しろ (SURVEY - HER ACTIVITY)」と書かれている。ビアンチーニの「SURVEY」は、サーベイヤー (Surveyor) にひっかけたものである。このいたずらをした予備搭乗員たちは、後にアポロ15号で飛行した。またコンラッドのチェックリストの後ろには、2ページにわたって難解な地質学の学術用語がつけ足されているというもう一つのいたずらが仕掛けてあった。それを読み上げると、地上の管制官たちは彼があたかも地質学の高度な専門家であるかのように思うはずであった。一方で月の上空で待機していたゴードンも、プレイボーイの「被害」を免れることはできなかった。仲間が月面で活動している最中に船内のロッカーを開けたところ、1967年度ミス8月のデデ・リンド (DeDe Lind) をモデルにした1969年11月のカレンダーが紛れ込んでいたのである。2011年、ゴードンはそのカレンダーを競売にかけた。「RRオークション」でつけられた値段は、12,000–15,000ドルであった。またゴードンのカレンダーはカラーであったのに対し、月面のチェックリストに仕掛けられていた写真は白黒だったのだが、1998年のテレビドラマ「フロム・ジ・アース/人類、月に立つ (From the Earth to the Moon)」では月面の写真もカラーにされていた。 司令船への帰還時、ゴードンは月面の砂塵にまみれた着陸組2人に対し「俺のクリーンな司令船が汚れる!」と言い入船を拒否、結局2人は着陸船の中で宇宙服も下着も脱ぎ捨て全裸で司令船に戻ることを余儀なくされた。 彫刻家のフォーレスト・マイヤース (Forrest Myers) は、着陸船イントレピッドの脚の中に「月の博物館 (Moon Museum)」という数センチ四方の作品を忍び込ませてあると主張している。彼によれば、最初は公式にNASAに申し出たのだがうまくいかなかったため、グラマン社の無名の技術者に協力してもらって成し遂げたとのことである。 ビーンは宇宙飛行士の銀の階級章を、記念品として月面に置いていった。これは訓練は成し遂げたものの、まだ宇宙を飛んでいない飛行士たちのためのものであり、ビーンはそれを6年間身につけていた。彼はこの飛行が成功裏に終われば金の階級章を得ることになっていたため、古いものはその後は必要がなくなると感じていた。月面で、ビーンは銀の階級章をクレーターの中に投げ入れた。これは軍のパイロットたちに伝わる、古い階級章を捨てるときの儀式の延長として行われたものだった。
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