光線/粒子線兵器
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/06 02:46 UTC 版)
初期には核爆発を動力源とするX線レーザーによるミサイル迎撃が検討された。これは人工衛星(軌道迎撃衛星)から発射されるもので、通常のレーザーと仕組みは同じであるが、エネルギー源が原子爆弾であるという点で非常に開発が困難であった。1983年に最初の実験が行われているが、核爆発によって計器が破壊されて数値を得ることができなかったため開発が断念された。核動力の実用化には失敗したが自由電子レーザーなどX線レーザーそのものは現在各方面で利用されており、SDI構想もその発展に貢献している。 化学レーザーは海軍と空軍主導で開発が進められた。海軍はSDI構想以前から、艦船に搭載する近接防御兵器としてレーザー兵器を独自に研究していた。これは「シー・ライト計画」と呼ばれており、まず出力0.4メガワットのフッ化重水素レーザー、ベースライン・データ・レーザー(BDL)を完成させ、1979年には対戦車ミサイルBGM-71 TOWの撃墜に成功。続いて出力2.2メガワットの実用プロトタイプMIRACL(Mid-Infrared Advanced Chemical Laser、中赤外線先進化学レーザー)の制作に入る。1980年に完成、1981年には出力試験も終えたが、予算のカットなどもあり、追跡・照準システムも含めた全システムが完成したのは、SDI構想後の1984年だった。開発早々の1985年にはタイタンミサイルのブースターを破壊することに成功している。 空軍の化学レーザーは『トライアッド』と呼ばれており、SDI構想以前から研究されていた唯一の宇宙用レーザーとして知られている。レーザーの発振装置、目標の追跡・捕捉装置、収束ミラーの三要素から成り立つため、空軍からDARPA(国防総省高等研究計画局)に研究が移管された際、『トライアッド(三和音)』と名付けられた。高度600 - 1,200kmの軌道上に配置する、出力5メガワット、射程5,000kmのレーザー衛星の開発を目指していた。 また、これらの構想とは別に、波長が長く、大気圏での減衰が少ない点を生かして、地上設備から発射し、軌道上の「ミラー衛星」で反射させて目標に命中させる方法も研究された。 化学レーザー(フッ化重水素レーザー)は波長の長い中赤外線のレーザー光を発振するため、大直径の収束ミラーが必要である。しかし、薬剤の化学反応だけでレーザー光を発振できるので、強力な一次電源が必要なく、出力と比してシステム全体は小型化できる。そのため軍用・宇宙用レーザーとして本命視されており、研究も最も進展していた。THELやAL-1など、「SDI後」のレーザー兵器もすべて化学レーザーであり、MIRACLはSDI構想中止後も断続的に研究が続けられ、対衛星攻撃や、砲弾迎撃実験に供されたと言われる。 非荷電粒子線は1989年にロケット搭載型が実際に放射実験を行っている。実験は成功し、予想通りの運動を確認することができたが、宇宙空間では予想外の副作用も確認された。
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